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砂漠の色男5
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「で、でも、早く行かないと、」
訳が判らないまま、それでも男にそう言えば、彼は少年の頭をわしゃわしゃと撫でたあと、ぱちりとウィンクをして寄越した。
「ま、俺に任せとけって」
そう言って笑った男は、少年が言葉を返す前に駆け出した。
「風霊、火霊、ちょびっと加速よろしく!」
言うや否や、男の脚を雷の衣が覆う。その力を利用して速度を上げた彼は、そのまま凄まじい速度で横転している馬車へと向かった。かろうじて少年の目でも姿を追うことはできたが、一般的な人間の身体能力で出せる速度ではない。
あっという間に馬車にたどり着いた男は、馬車の中を覗き込んだ。
「よし、生きてるな」
「あ、お、お願いします! 助けて! 助けてください!」
そこそこの大きさがあるその馬車には、数人の男女が取り残されていた。その全員の無事を確認してから、男は口の前で人差し指を立てる。
「助けてやるから、ひとまず静かにしとけ。今みたいに騒ぐと、」
そこで言葉を切った男が、振り返ることなく後方へと掌を向ける。
「――“雷盾《サンダー・ソル》”」
男がそう唱えた瞬間、雷の膜が盾のように馬車を覆った。そしてその盾に、ザナブルムの尾が突き刺さる。後方からの悲鳴を聞きつけたザナブルムが、その毒針を突き立てようとしたのだ。
見もせずにそれを防いでみせた男は、恐怖に震える人々に対し、おどけたように肩を竦めて笑った。
「とまあ、こんな風にあいつを怒らせちゃうから、静かにな?」
皆が口を押さえて頷くのを確認してから、男はザナブルムに向き直り、ぐるりと肩を回した。
「よっしゃ、そんじゃいっちょやりますか」
そう言い、男が戦場へと躍り出る。雷魔法による加速の力を借りてザナブルムの側方に回り込んだ男は、すぅっと息を吸い込んだ。
「お食事中悪いんですけど、そういうのはお家に帰ってからやってくれませんかねぇ! 今帰るんだったら許してあげるからさぁ!」
警戒範囲内で騒音を出せば、ザナブルムの攻撃対象になる。それを知っていて男が敢えてその行動に出たのは、馬車から気を逸らさせるためだ。
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