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砂漠の色男6
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突然叫んだ男に、周囲にいた衛兵たちがぎょっとしたような顔をして彼を見る。だが、誰一人として言葉を発するものはいなかった。ここで音を出せば、男の邪魔になる可能性があるからである。
果たして、男の目論見通りにザナブルムの尾は彼目がけて的確に振るい落とされた。だが、男は巨大なそれをひらりと躱す。そして彼は、腰に下げている双剣の内の片方を引き抜いた。赤の王の剣よりも小ぶりな、大きく湾曲した剣だ。
「“雷魔法憑依《ライトニング・エンチャント》”」
呪文に応えた風霊と火霊が、男の握る剣に雷を纏わせる。そこまでの動作を流れるようにこなした彼は、握った剣を尾に向かって振り上げ、見事一撃でその尾を斬り落としてみせた。
ザナブルムの甲殻は非常に硬く、物理的に破壊するのにかなりの労を要するのだが、それを容易にこなしたこの男は、相当の使い手であることが窺えた。
尾の一本を落とされたザナブルムは、事態が急変したことを察して食事を止め、機敏な動きで男へと向かった。さしもの捕食者も、尾だけで相手をするには獲物が強すぎると考えたのだろう。
一方の男は、容赦なく襲い来る鋏と尾を掻い潜りながら、じわじわと後退していった。一見すると押されているように見えるが、そうではない。ザナブルムをなるべく馬車から遠ざけようとしているのだ。
(さっき落とした尾は、たぶん睡眠効果のある毒針がついてる尾だ。となると、残りの二本のどっちかが麻痺毒で、どっちかが即死毒だな)
どちらにせよ、僅かに掠っただけで命はないだろう。ザナブルムが即死毒の針を使うことは滅多にないが、男相手に残りの尾を二本とも使っているところを見ると、先程の一撃で男の腕をそれなりに見極めたようである。
(尾は一番旨いから、できれば判別したいところだけど、そうも言ってらんねーか)
これ以上長引かせるのは、人々の不安を煽るだけだ。そう判断した後の彼は素早かった。
回避に徹するのを止め、ザナブルムの猛攻を最小限の動きで躱しながら、振り下ろされた鋏に跳び乗る。そしてそこからあっという間に背中に駆け上がった彼は、真っ直ぐに向かってきた強靭な尾を横薙ぎに斬り落とした。続いて、ザナブルムの後方から飛び降りつつ、残った一本を根元から落とす。そこまでやり終えた彼は、剣の魔法憑依を解いて鞘に収めた。
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