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砂漠の色男7
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「いやぁ、久々に良い運動したな。っつー訳で、あとはもう良いか」
そう言った男の指がザナブルムを指し示す。
「――“雷の包丁《トル・ピサウ》”!」
瞬間、無数の雷が奔り、ザナブルムを堅牢な鎧ごと切り裂いた。しかも、ただ細切れになった訳ではない。鋏、腕、内臓、といった風に、部位ごとに綺麗に分けられたのだ。
「あ、ごめん風霊ちゃん。悪いんだけど、地面につかないように、軽ーく浮かせといてくれる?」
彼のお願いに、吹いた風がザナブルムの肉を受け止める。
その瞬間、一部始終を見守っていた少年の周囲で、わっと歓声が上がった。驚いた少年が周囲を見れば、避難してきた人々を含めた大勢が歓喜に湧き、どっと門の外へと押し寄せた。それに飲み込まれた少年は、なす術なく門の外へと流されてしまった。人混みが大の苦手な少年にとっては大変苦痛な時間だったが、途中、肩に乗っているトカゲが少年を見上げて首を傾げてきたのには、慌てて首を横に振っておいた。
トカゲが何を言おうとしていたのかは判らないが、「こいつら邪魔? 全部焼く?」と問われたような気がしたのである。
そんな民衆の元に解体されたザナブルムを携えた男が戻ってくると、より一層人々が湧き上がった。
「きゃー! クラリオ様かっこいいー!」
「クラリオ様ー! こっち向いてくださーい!」
「ありがとうございます! 流石はクラリオ王陛下!」
「うおおおお! 一生ついていきます!」
周囲の人間たちの口から飛び出てきたその言葉に、少年は目を剥いた。
(……え? は……? 王陛下……?)
恐る恐る男の方へと視線を戻せば、蜂蜜色の髪の色男は、大きく挙げた手をひらひらと振っているところだった。
「はいはーい! 皆大好きクラリオ様だよぉ! 麗しき女性の皆さんは嬉しい歓声をありがとう! もっと讃えても良いのよー!」
「きゃあああああ! クラリオ様ー!」
「むさ苦しい男共は黙っててねー! お前らからの歓声浴びてもなーんも嬉しくないからねー!」
「うおおおおおお! クラリオ王陛下ー!」
「嬉しくないから黙れっつってんだろーがぁ!」
男性陣は酷い言われようだが、何故だかそれはそれで盛り上がっている。しかし、それにしても、
(お、王様、なの……? この人が……?)
そう。女性に向かってひらひらと手を振りながらウィンクを撒き散らしているこの男こそ、黄の国を治める国王、クラリオ・アラン・リィンセンであった。
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