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砂漠の色男8
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「あー、この中に料理人いる? いたらこのザナブルムの肉はあげるから、格安で皆に振舞ったげて。あ、外にほっぽってきた尾には手ぇ出すなよ。今頃肉に毒が回って食えるもんじゃなくなってるから」
ザナブルムの肉は非常に美味だが、仕留める前に尾の先端を斬り落とさないと、それと繋がっている部分の肉に毒が回ってしまうのだ。ちなみに、即死毒がある尾だけは、肉全体が毒袋のような役割を果たしているので、どのような調理法でも食べることができない。
「あと、商人の皆は甲羅を山分けしちゃってー。加工がちょっと大変だろうけど、良い品作れるからさ」
大盤振る舞いの王に、またもや歓声が上がり、人々がわっと肉や甲羅に群がる。その群れにまたもや揉みくちゃにされそうになった少年は、慌てて群衆から離れることにした。
「す、すごいね……ティアくん……」
赤の王も民からの人気者だったが、黄の王も負けず劣らず人気を博しているらしい。
「取り敢えず、モファロンのところに戻ろうか……」
このままここに居たら、またお祭り騒ぎに巻き込まれてしまうかもしれない。そう思ってさっさと民衆に背を向けた少年だったが、そんな彼を黄の王が引き留めた。
「おいおいちょっと待てって。お前、えーっと、アマガヤキョウヤ」
「……え」
なんで一国の王が自分の名前なんて知っているんだろう、と思いながら振り返った少年に、黄の王が笑みを向ける。
「いやぁ、さっきはうちの国民を助けようとしてくれてありがとうな」
「え、あ、いや、結局僕、何もしてませんし……」
「なーに言ってんだ。こういうのは気持ちの問題ってやつだろ。ま、何にせよここまで無事に来られたみたいで良かったわ。ロステアール王が炎獄蜥蜴《バルグジート》をつけたって言ってたから大丈夫だとは思ってたけど、何かあったら事だからなぁ」
「あ、あはは、そうですね」
いつもの白熱電球のような笑みを浮かべつつ、適当に相槌を打つ。何のことはない。黄の王が自分を知っていたのは、赤の王に聞いたからなのだろう。考えてみれば当然のことだ。少年は帝国に狙われている身なのだから、円卓の国王は皆、少年のことを把握している筈である。
仕方がないことではあるが、それはそれでとても居心地が悪いなぁと少年は思った。
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