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リィンスタット王城3
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「ああ、……最近どうも、うちの国の魔獣の動きが異常なくらい活発でな。お前もこの前ザナブルムを見ただろ? ありゃ獰猛だけど縄張り意識がはっきりしてる分、滅多に人里に現れないタイプの魔獣でな。連中の住処に足を踏み入れなきゃ、まず攻撃されることはない筈なんだが、どういう訳か、ここのところ街の近くでの発見報告が相次いでる。ザナブルムだけじゃなくて砂蟲《サンドワーム》もやたらあちこちで暴れ回ってるみてーだし、いくら雨期前だからってちょっとおかしいんだよ。だからまあ、簡単に言うと、うちの国民でもないお前に割く兵力があんまないワケ」
そう言って王は、やれやれと溜息を吐いた。
「実は今も、王宮周りの兵をごっそり全国に派遣しててさぁ。必要最低限の戦力は残してあるけど、結構カツカツなんだわ」
「え、あの、そんな大変な時に、僕なんかがお邪魔してよろしかったんですか……?」
「よろしいもクソも、うちで引き受ける以上に良い選択肢がなかったら仕方ねぇや。ああ、別にお前のせいじゃないんだから、あんま気にしなくて良いぞ。その代わりと言っちゃあ何だが……、」
そこで言葉を切った王が、やや気まずそうな顔をしたあとに、がしがしと頭を掻いた。
「こっちもこういう状況だからな。国かお前かって事態になったら、迷いなくお前を見捨てさせて貰う。お前には悪いと思うが、俺にとっちゃ、自分とこの国民が第一なもんでな」
こういうことは最初にきちんと伝えておいた方が良いだろうと言った王に、少年は何度か瞬きをした後、内心で首を傾げた。そして、こくりと頷く。
「はい、判っています」
「……お前、随分聞き分けが良いのね」
なんだか困惑したような表情を浮かべた王に、少年はまた内心で首を傾げた。
聞き分けが良いも何も、王が言ったことは至極当然のことだ。自国の民と自分ならば、間違いなく民を選ぶべきである。もし万が一自分が選ばれるようなことがあったとしても、それは少年が少年だからではなく、少年がエインストラかもしれないからだ。少年は守られるに値するような存在ではないし、寧ろ真っ先に贄にされて然るべきだろうとすら思う。そんな自分に僅かでも戦力を割いてくれると言うのだから、感謝こそあれ不満など抱くはずもなかった。
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