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リィンスタット王城7
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なんだか怖そうな人だな、と思った少年をよそに、男を自分の傍まで呼び寄せて座らせた王は、その背を遠慮なくばしばしと叩いた。
「こいつはアグルム。うちの兵の中でもそこそこ強い奴なんだけど、この度お前の専属護衛としてつけることになった。ほれ、挨拶しろ」
「……アグルム・ブランツェだ」
仏頂面のままそう言ったアグルムの背中を、黄の王がまたもや叩く。
「いやぁ悪いな。こいつ愛想ってもんがないのよ。でも腕は確かだし命令にも忠実だから、信用してやって」
「痛いんで叩くのやめて貰えませんか、陛下」
「この通り敬語も怪しいくらいなんだけど、マジで腕だけは確かだから」
そう言って笑う黄の王に、少年も微笑みを返しておく。正直、口数が多い黄の王よりはこの護衛の方がまだ良い気がする、と少年は思った。
「お前の護衛に兵力を割いてやれない代わり、になるかどうかはまあ判んねーけど、取り敢えずこいつだけは絶対にお前の味方でいるようにしといてやるから」
「ええと……?」
王の言う意味が判らず首を傾げた少年に、アグルムが口を開く。
「つまり、何があっても彼を守れということですか」
「そうそう。この先、国やお前自身がどんな状況に置かれたとしても、死ぬ気でこいつのこと守ってやれ。帝国との件がひと段落するまで、お前に下す命令はそれだけだ」
いつもと変わらないおちゃらけた調子でそう言った王を、アグルムが見つめる。そのまま数度瞬きをした彼は、次いで、すっと目を細めた。
「……それだけ、ですか。つまり、今後陛下がこいつを殺すという判断をしたとしても、俺はこいつを守らなきゃならないってことですね」
アグルムの言葉に、少年が驚いて黄の王の様子を窺う。少年は黄の王が否定することを期待したが、しかし王は満足そうに微笑んだだけだった。
「陛下が直々にこいつを殺そうとしたとしても、俺にはこいつを守れと」
その問いに、やはり王は何も言わない。だが、否定されないということは、つまりそういうことだ。
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