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リィンスタット王城8
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はぁ、と小さく息を吐いたアグルムは、やや恨めしそうな表情を浮かべて王を睨んだ。
「ご命令には従いますが、陛下と敵対すれば俺は抵抗虚しく死ぬと思うんですが」
そもそも抵抗らしい抵抗すらできないと思いますけど、と続けた彼に、王が声を上げて笑う。
「そりゃまあそうだ。俺とお前じゃ力量差がありすぎんよ」
笑い交じりにそう言った王は、だが迷いのない眼差しでアグルムを見た。
「だけど、それでもお前はこいつを守ってやれ。その結果、俺に殺されることになっても、だ。良いな」
否を許さないその命に、アグルムは王を見つめ返してから、黙したまま深く頭を下げた。
元よりアグルムに否を唱えるつもりなどないのだ。だというのに、敢えて圧を掛けるような言い方をするあたり、この王らしいと言えばらしい。
「……相変わらず、甘い人ですね」
ぼそりと呟かれた言葉は、恐らく王にも届いたはずだ。だが、王は何も言わなかった。
そんな中、ハラハラとしながら状況を見守っていた少年は、またもや顔色を悪くして黄の王を見た。
「あ、あの、そ、そんな命令しなくたって……」
何も自分のために命を懸ける必要なんてどこにもないではないか、と思った少年に、黄の王は少しだけ困った表情を浮かべた。
「うーん。まあ、重すぎて逆に負担なのは判んだけど、ここは我慢して飲み込んでくれねぇかな。自信満々でーすみたいなこと言ってお前のこと引き受けちゃったから、守り切れないと他の王からめちゃくちゃ怒られそうなんだよ。ほら、取り敢えずポーズだけでも精一杯守りましたって感じにしときたいワケ。判る?」
「で、でも、」
なおも食い下がろうとした少年を、アグルムが睨んだ。もしかすると本人にそのつもりはなかったのかもしれないが、少々強面なので少年にはそう思えてしまったのだ。
怒らせてしまっただろうかと思った少年が、反射的に口を閉じる。そのまま、アグルムの視線から逃れるように顔を俯けてしまった少年を見て、黄の王がアグルムの頭をぽかりと殴った。
「護衛対象を威嚇すんなバカ」
「……別に威嚇なんてしてないです」
「お前顔が怖いんだから、もっとにこやかにしとけよ。キョウヤの奴完全にビビってんじゃねーか」
やれやれ、とわざとらしいため息を吐いた王にアグルムは不服そうな表情を浮かべたが、何も言わなかった。
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