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リィンスタット王城13
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「あ、あの、禁止事項って……? それに、その手紙は……?」
「あー、これな。ロステアール王が送ってきたんだよ」
「あの人が……」
思わずそう呟いた少年に、黄の王は大量の便箋をばさばさと振って見せた。
「見ろよこれー。めちゃくちゃ分厚いだろ? これぜーんぶお前の話なんだぜ? 寝るときは眼帯外してるから寝室覗くなとか、風呂は一人で入らせてやれだとか、広すぎる部屋だと逆に落ち着かないだろうから適度な広さの部屋を用意してくれとか、花の蜜が好物だからデザートはそういうものが良いだとか。まあそんな感じのことが、びっちり便箋二十枚分」
いやー引くわー、と言ってケラケラ笑った王に、引きたいのはこっちである、と少年は思った。
(なんであの人、僕が花の蜜好きとか知ってるんだろう……)
そんな話をした覚えは一切ないので、普通に怖い。
「あー、あとあれも渡されてたんだった。おーい!」
何かを思い出したらしい黄の王が、扉に向かって声を掛ける。それを受けて部屋に入って来た侍女に王が何事か言うと、彼女は一度退室してから、何か大きな袋を抱えて戻ってきた。そして、それを受け取った黄の王が、そのまま袋を少年へと差し出す。
「ん。ロステアール王から。開けて良いぞ」
「は、はあ……」
間の抜けた返事をしながら受け取り、言われたとおりに袋を開ける。そしてそこに入っていたものを見て、少年は顔に貼り付けていた微笑みを引き攣らせてしまった。
「…………ロスティ……」
そう。袋の中にいたのは、あのくすんだ炎の色をした巨大なテディベアだったのだ。
「……あの、これは……」
「なんか知らねぇけど、自分と長期間離れるのはお前が寂しがるからって寄越されたぞ」
そう言った黄の王が、袋の中を覗き込んで盛大に顔を顰めた。
「うへぇ。これ完全にあの王サマをモチーフにしたぬいぐるみだよな? 引くわー……」
「え、あ、いや、あの、別に僕は……」
あの王がいないところで寂しくなどならないし、なんなら少年の方が絶対に引いている。そう思った少年だったが、はたと周囲に目を向けると、黄の王だけでなく王妃たちも若干うわぁという顔をしていた。それはそうだろう。当然の反応だ。だがこれに関して、少年には一切の落ち度がないのだ。
なんとか判って貰えないだろうかと後ろを振り返った少年だったが、アグルムもまた異物を見るような目でテディベアを見ていたので、望み薄なようである。
(……なんか、もう、良いや……)
こうして、赤の王との仲を盛大に勘違いされた状態で、リィンスタットでの生活が始まったのであった。
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