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城下にて1
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少年がリィンスタット王国の王宮に来てから一週間。ようやくここでの生活に慣れ始めた彼は、昼下がりの中庭でスケッチブックと向き合っていた。真剣な目で紙に鉛筆を走らせていく彼の目の前には、濃い黄色の毛並みをした大きな獣、リィンスタットの王獣であるリァンがいる。畏れ多いことに、黄の王の計らいでリァンの写生をさせて貰えることになったのだ。
黄の王がそれを言い出したとき、リァンはとても不服そうに唸っていたのだが、王が半ば無理矢理説得してくれたため、こうして大人しく少年に付き合ってくれている。
勿論少年は、高貴な王獣様にさせることではないと断ったのだが、どうやら黄の王自身、赤の王から頼まれたことだったらしく、ここでお前に断られるとリィンスタット王としての面子が丸潰れだと言い募られ、丸め込まれてしまったのだった。
そんなことを言われても、乗り気ではなさそうな王獣の時間を貰ってスケッチをするなんて天罰がくだりそうだ、と尻込みしていた少年だったが、いざスケッチブックと向き合えば、そんな心配はすっかり忘れて筆を走らせることに集中してしまった。王獣たるリァンの美しさは、少年の心を奪うのに十分だったのだ。
少年のストールから這い出たティアが王獣によじ登って、その背をぺちんぺちんと叩き出したときはさすがに肝を冷やしたが、それ以外は至って平穏な時が過ぎていった。
基本的に常に少し離れた場所に控えているアグルムも、少年のことを気遣ってか、必要以上に存在感を出すことはなかったし、少年からすれば至れり尽くせりな環境である。それがまた罪悪感を煽ってくるのだが、そこはまあ卑屈な少年の特性なので仕方がないだろう。
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