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城下にて2
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ほぼ天頂にあった日がやや傾き始めた頃、ようやくスケッチを終えた少年が、ふぅと息を吐いて筆を置く。王獣の姿を見る機会などなかなかないので、思わず時間をかけて丁寧に描いてしまった。だが、その分自分でもかなり満足のいくものが仕上がったので、良しとしよう。そう思って少しだけ頬を緩めた少年が、スケッチブックを閉じる。そして立ち上がった彼は、王獣に向かって深々と頭を下げた。
「お時間を取らせてしまって申し訳ありません。ありがとうございました」
そう礼をすれば、王獣はちらりと少年に視線を向けてから、地を蹴ってどこかへと飛んで行ってしまった。一瞬、怒らせてしまっただろうかと心配になった少年だったが、リィンスタットの王獣はドライな性格だと聞いているから、あれが素なのだろうと思い直す。
「……怒らせちゃった訳じゃ、ないよね……?」
恐る恐るそう呟けば、ストールからひょっこりと顔を出したトカゲが、こくこくと頷く。上位の幻獣であるらしいこの炎獄蜥蜴《バルグジート》は王獣の言葉が判るようなので、彼がそう言うのなら、実際そうなのだろう。
そう考えて少しだけほっとした少年に、後ろに控えていたアグルムも頷く。
「リァン様は陛下と違って不必要に愛想をばら撒く方ではないからな。興味がない相手にはいつもあんな感じだ」
「あ、やっぱりそうなんですね……」
黄の王に対するトゲを感じる言い方だな、と思った少年だったが、それについてはコメントしないでおいた。なんとなく、赤の国の宰相を思い出したのだ。
(……きっと、どこの国の王様も、家臣に迷惑掛けてるんだろうな……)
これまた、北方国の王が聞いたら怒りそうな感想である。事実、金の国以外の南方国と黒の国はその気が非常に強いが、北方国と白の国の国王は、家臣の胃を痛めるような真似はしない。
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