アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
城下にて5
-
騎獣に運ばれ、城下の商店街へとやってきた少年は、活気溢れる街並みに圧倒された。金の国の商店も賑やかではあったが、ここ黄の国の商店は賑わいの方向性が違うのだ。金の国よりも、もっとずっと親しみやすいというか、とても庶民的な印象を受ける。店はしっかりとした家屋の内部に構えられているものよりも、地面に直接敷かれた布の上に商品が並べられた、露店のような様相のものが多い。照り付ける陽光から身を守るように、屋根代わりの布が張られてはいるが、どちらかというと簡素な店構えである。
だが、少年なりに職人として目利きしてみれば、売られている品の質が低いということはないと判った。王宮までの道中で見た店もやはりこういう造りをしていたから、この国の店ではこういうスタイルが一般的で、それは首都でも変わらないということなのだろう。
(それにしても、見たことがない品がたくさんあるな……)
旅の途中ではあまり見る時間がなかったが、こうして改めて眺めてみると、金の国ではあまり目にすることのない品が結構並んでいる。金の国の貿易祭では、希少価値の高いものや汎用性のあるものが優先的に仕入れられるため、各国の庶民的な特産品というのは意外と出回らないものなのだ。
色々と面白いものはあったが、特に少年の目を引いたのは、店先で調理工程自体を見世物に客寄せをしている料理店だった。雷魔法らしきもので食材である砂兎を華麗に捌き、スパイスの香りが強く漂うスープへと入れていく様子は、まるでショーを見ているような気分にさせる。
(……でも、あの雷魔法、なんかどこかで見たような気が……)
じっと調理ショーを見ている少年に気づいたアグルムが、ああ、と呟いた。
「“雷の包丁《トル・ピサウ》”か」
「とる、ぴさう?」
「てっとり早く食材を切り分けるための雷魔法だ。この前陛下がザナブルムに対して使った筈だが、見ていなかったのか?」
言われ、記憶を探った少年だったが、スロニアの街で黄の王が繰り出した魔法と店先で食材を切っている魔法とが同じ物だとは到底思えない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
54 / 197