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城下にて6
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「……お、同じ魔法、なんですか……?」
恐る恐るといった風にそう尋ねれば、アグルムが頷く。
「“雷の包丁《トル・ピサウ》”は、食材それぞれに適した切り分けをする雷魔法だ」
「しょ、食材に適した……」
「砂兎なら、胸肉、もも肉、すね肉、といったように部位分けされるし、魚なら基本的には三枚おろしにされる」
「す、すごいですね……」
あの短い呪文の中に一体どれだけの情報が詰まっているのだろうか、という少年の疑問を察したのか、アグルムが再び口を開く。
「陛下が、火霊と風霊に代表的な食材の扱いを覚え込ませたんだ。だから、火霊と風霊が勝手に判断してくれる」
「…………ええと……?」
言っている意味が判らなくて思わず聞き返した少年に、アグルムは少しだけ不思議そうな顔をした。
「まさかお前、知らないのか? リィンスタット王国のクラリオ王と言えば、次々と新しい魔法を開発していることで有名だと思うんだが」
「そ、そうなんですか……?」
隣国のことすらよく知らない少年が、更に離れた黄の国のことなど知る筈もない。冗談抜きで初耳だった少年が驚けば、アグルムは呆れたような顔をしてから、それでも話を続けてくれた。
「トル・シリーズと言ってな。頭にトルがつく魔法は全て、うちの陛下が新しく創った魔法だ。例えば“雷の包丁”なら、こういう料理屋用に開発された料理魔法だな。うちの国では店先で調理の様子を見せる形式の店が多いから、そういう場で使えるだろうと思って創ったらしい。だから、本来はザナブルムに使うような魔法ではないんだが……」
まあ、目立ちたかったんだろうな、と続いた言葉に、少年は内心で、ああ、と呟いた。確かにあの王様ならあり得ることだな、と思ったのだ。
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