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城下にて7
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「陛下だから問題はなかったが、生半可な人間がザナブルム相手にあの魔法を使えば、それこそ魔力を根こそぎ持っていかれるだろう。“雷の包丁《トル・ピサウ》”は、使用対象に応じて消費魔力も変動する魔法だからな」
人間を丸呑みにできそうな巨大な生物相手に使ったならば、当然消費魔力も桁違いに大きいのだろう、と少年は思った。そしてそれをなんでもないことのようにやってのけてしまうあたり、国王というのはやはり規格外らしい。
だが、実力者であればあるほど呪文や詠唱の類を必要とせず、ときには精霊の名前を呼ぶだけで魔法を発動できると聞いていたが、どうして黄の王はわざわざ魔法を新たに確立しているのだろうか。王であれば、要点を言うだけで同様の現象を引き起こせそうなものだが。
抱いた疑問を素直に口にすれば、アグルムはそれにもきちんと答えてくれた。
「確かに陛下ならば、わざわざひとつの魔法として確立する必要はないのだろうが、それでは陛下以外が使えないからな。きっと、自分だけの魔法を作りたいのではなく、この国の魔法自体の底上げを考えているんだろう。……ああ見えて、お優しい方なんだ」
「そうなんですね……」
「あとは、単純に魔法として確立した方が効率が良い。いちいち要点を説明するよりも、呪文ひとつで発動できる方が早いだろう?」
「あ、はい、確かに。……でも、それなら他の王様もそうしていてもおかしくないと思うのですが……?」
当然の疑問に、アグルムは肩を竦めた。
「新しい魔法を確立するためには、相当な根気がいるんだ。なにせ、全ての精霊に現象についての共通認識を持って貰う必要があるからな。かなり高度な説明力と、精霊が飽きずに話を聞き続けてくれるようにするための工夫がいる。クラリオ王陛下は、そのあたりの才能がずば抜けていたんだろう」
どうやら、魔法に優れていれば誰でもできる、というものではないらしい。確かに、火霊の制御が苦手らしい赤の王にはできなさそうな芸当だ。
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