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まだ知らぬ想い3
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「今日は風が少ない日だったから、きっと星が綺麗に見えると思ったんです。それで、クラリオ様に少しだけ我侭を言ってしまったんですが、その甲斐がありました」
「我侭……?」
首を傾げた少年に、アメリアが悪戯っ子のような顔をして片目を閉じた。
「今の時間だけ、砂埃があまり上へ舞い上がらないようにしてください、って。空気に砂が混じってしまったら、折角の星空が台無しになってしまいますから」
「な、なるほど……」
なんともスケールが大きい我侭だな、と思った少年は、取り敢えず微笑みを返しておいた。そんな少年を連れて、アメリアが用意されていた椅子に座る。招かれるままに少年もその隣に座れば、暫しの沈黙が二人の間に訪れた。ただ黙って星空を見上げるだけの時間が過ぎていったが、しかし意外と心地は悪くない。
(あ……、王妃様、指とか、寒くないのかな……)
そう思った少年が、ちらりとアメリアの手元に目を向ける。少年の手は、その中に収まっているトカゲの体温で暖かいが、彼女にはそれがない。
そんな少年の視線に気づいたのか、アメリアが彼へと顔を向ける。そして彼女は、少しの間だけ迷うような表情を見せたあと、そっと少年を窺うように口を開いた。
「キョウヤ様は、何もお訊きにならないのですね」
「え……?」
「私の、生まれ故郷のことです」
その言葉に、少年の指先がぴくりと震えた。
「ロイツェンシュテッド帝国から来た女が王妃だなんて、と、思われませんでしたか?」
「…………いえ。……ただ、珍しいな、とは」
嘘ではない。驚きはしたが、恐らくアメリアが懸念しているのだろう嫌悪感などはなかった。
少年の答えに、何度か瞬きをしたアメリアは、再び星空へと視線を戻した。
「…………私、実は、十年ほど前まで、奴隷だったんです」
その言葉に、少年は驚いて彼女を見た。だが、空を見る横顔に表情の変化はない。
リアンジュナイル大陸には奴隷制度は存在しない。ならば、彼女の言う奴隷とは、ロイツェンシュテッド帝国における話なのだろう。
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