アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
まだ知らぬ想い4
-
「とある下級貴族に仕える奴隷だったんですが、どうしても耐えられなくなって、逃げ出したんです」
そう言ったアメリアは、自身の腹に手を当て、そっと撫でた。
「女の奴隷、という時点でお察しかと思いますが、男性を慰めることも仕事のひとつでした。けれど、奴隷に対する避妊なんて誰もしてくれません。だからといって、産む訳にもいきませんでした。私自身、不幸になることが目に見えている子を産みたいとは思いませんでしたし、何より、周囲が堕ろすことを強要してきました。膨れた腹では醜くて抱く気が起きないそうです。そうやって、孕んでは堕ろし、孕んでは堕ろし、……そんなことを繰り返していたら、気づいたときにはもう、二度と子を望めない身体になっていました」
そう言ったアメリアが、そっと腹から手をどかして笑った。
「馬鹿ですよね。そうなって初めて、このままこんな生活を続けるなんて嫌だと思ったんです。それまでは、逃げても足掻いても無駄だと諦めていたのに」
「…………いえ」
その先の言葉は続かなかったが、少年は本心からそれを否定しようとした。だって、彼女は行動したのだ。どんなに遅くとも、自らの意思で現実を変えようと足掻いた。それは、少年にはない強さだ。
「ふふふ、ありがとうございます。でも、何も考えないで逃げ出したものだから、とても大変だったんですよ。何度も死にかけて、なんとか逃げ続けて、交易船に侵入してようやくこの国まで来たのですが、それでも追っ手は追い縋ってきて、結局私は捕まってしまいました。奴隷一人くらい、逃げ続ければ諦めてくれるだろうと思っていたんですけれど、私の主は矜持の高い方だったんでしょうね。……そんなとき、馬鹿な私を助けてくださったのが、クラリオ様だったんです」
アメリアが呼んだ王の名が、少年の知らない響きの音で紡がれた気がして、少年は何故だか不思議な気持ちになった。別に、変な訛りがあるだとか、そういうことではない。だが、何かが違う気がしたのだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
61 / 197