アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
まだ知らぬ想い5
-
「クラリオ様は、よそ者の私を助けてくれただけでなく、リィンスタットへの移住を認めた上で、まっとうな職まで与えてくださったんです。その後も定期的に私の元へ足を運んでくれて、色々と気に掛けて頂きました。そして私は、そんなクラリオ様に、恋をしたのです」
そう言って、アメリアが目を閉じた。そしてそこで、少年はようやく気づく。
(……ああ、この人が王様を呼ぶ時の声は、あの人が僕を呼ぶときの声に、似ているんだ)
甘いような優しいような、それでいてどうしてか悲しくなるような、不思議な音の響きは、まさにそうだ。全く違う二人の声が、どうしてこんなにも似ているのか。少年はまだ、その答えを知らない。
だが、アメリアの話を聞き、その声に触れる中で、浮かび上がった疑問があった。それは、少年がどこかでアメリアと自分を重ねてしまうところがあったからなのかもしれないし、ただの思い付きなのかもしれない。けれど、どうしてか、少年はその疑問を胸の内に留めておくことができなかった。
そうして、ぽつりと言葉が滑り落ちる。
「……寂しくは、ないんですか……?」
ほとんど無意識に零れ落ちたその言葉に、アメリアが目を開け、少年へと顔を向けた。そして、その顔に優しい微笑みが浮かぶ。
「どうして、私が寂しいと?」
その声に怒りや悲しみなどの良くない感情はない。だが、少年の言葉を疑問に思っているようでもなかった。寧ろ、少年をあやすような雰囲気さえ感じさせる音だ。
彼女の問いかけに一瞬怯んだ少年は、だがその雰囲気に背を押され、そっと言葉を続ける。
「王妃様、は、あの、……とても、リィンスタット王陛下のことを、愛していらっしゃるようでした、から、……その、」
その先を口にして良いのだろうか、と言い淀んだ少年が、アメリアの顔を窺う。だが、彼女はやはり、優しく微笑んでいるだけだった。
その顔が、あまりにも優しかったからだろうか。少年の唇から、続く言葉が自然と落ちる。
「……自分だけじゃないの、って、……寂しい、かな、って……」
そうだ。深く愛した人にとって、自分が唯一ではないということは、とても寂しいことなのではないかと、そう思ったのだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
62 / 197