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まだ知らぬ想い8
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はっきりと告げられたその言葉に、少年が目を開く。そしてそのまま、考えるよりも先に彼は駆け出していた。縋るように抱えたトカゲが、懸命にその頭を掌に擦りつけてきたが、今ばかりはそれで心が安らぐことはなかった。
ただ、あの王が無事であるのかだけが気がかりで仕方ない。
(違う。あの人がそんなに簡単に死ぬ筈がない。だってあの人はとても強いんだから。大丈夫、大丈夫……)
そう自分に言い聞かせるが、走る脚を止めることはできない。とにかく、一刻も早く彼の王の無事を確認しなければ落ち着かなかった。
無我夢中で応接室に向かっていた少年は気づかなかったが、王宮を駆ける部外者を誰も止めなかったのは、アメリアが手配してくれていたお陰だった。そうして目的の部屋に辿り着いた少年を扉の前で待っていたのは、黄の王本人だった。
「よー。その様子じゃ、アメリアちゃんからロステアール王のこと聞いちまったな?」
「あ、あの人は!? 無事なんですよね!?」
普段の少年からは想像ができないほど取り乱しているその様子に、黄の王が目を細める。
「今のところ、死んだって話は聞いてねーよ。まあ全部話してやるから、取り敢えず部屋に入れ」
促されて入室した少年は、王の勧めに従って絨毯の上に座った。一応安否の確認ができたことで少しだけ心が落ち着きはしたが、未だに不安は色濃く残っている。そんな彼に、黄の王が小さく息を吐いた。
「……隠してて悪かったな。アメリアちゃんから聞いただろうが、単刀直入に言うと、ロステアール王がやばい。なんでかは知らねぇが、物凄く厄介な敵に目をつけられたみたいだ」
「……でも、無事なんですよね? あの人は、今、どこに?」
少年の問いに、黄の王はやや顔を顰めた。
「俺にも判らねぇ。というか、誰もロステアール王の行方は知らない」
「……どういう、ことですか?」
硬い表情のままの少年に、黄の王は再び息を吐き出した。
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