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まだ知らぬ想い10
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ひ、と狭まる喉が引き攣った音を立てる。その苦しさから逃れたくて、少年は無意識のうちに喉に爪を立てた。それを制するようにトカゲが少年の手を叩いたが、今の少年はそれに気づくことすらできない。
その有様に、黄の王が眉をひそめる。そして、僅かに考える素振りを見せたあと、彼は少々乱暴に少年の肩を掴んだ。
急な接触にびくんと少年は身体を跳ねさせ、けれど確かに王に目を向けた。その僅かな隙を逃さず、王は少年に言葉を差し向ける。
「『何も心配することはない。大丈夫だ』、だと」
赤の王からの伝言だ。そう付け加えられた言葉に、恐慌状態だった少年は、今度ははっきりと目の前にいる男を認識して瞳に映した。
「あのひと、からの……?」
小さく言葉を繰り返した少年に、黄の王がしっかりと頷く。
「……あのひと、が……」
伝言の中身を何度も咀嚼しているうちに、少年は自身の呼吸が少し楽になっていることに気がつく。まだ震えの残る手をそっと喉から外し、何度か大きく深呼吸すれば、より楽になるのを感じた。
(……だいじょうぶ、って、あのひとが……)
柔く微笑む赤の王の、美しい目を思い出す。この世の何よりも美しい王が、言葉を違えたことがあっただろうか。
そうだ。この世で最も信じ難い、自身に向けられる愛すら、彼の王は少年に信じさせてみせたのだ。そんな彼が、大丈夫だと言葉を残した。
(……なら、きっと、……大丈夫、だよね、貴方……)
不安が拭いきれた訳では無い。何せ赤の王を狙っているのは、赤の王すら殺すと予知された相手なのだ。だが少年にとっては、まだ見ぬ先の話よりも、赤の王の確かな言葉の方がずっと重い。
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