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深淵6
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王の見た目から判断した、という可能性はある。だが、果たしてそれだけだろうか。成長著しい子供ならまだしも、老齢の王を見て十年の時を感じることができるものだろうか。
(……十年先を視たのか、予想したのか)
どちらにせよ厄介なことだ、と胸の内で呟いた王を見て、ウロがひらひらと手を振った。
「あ、大丈夫だよ。僕、先を視る趣味はないんだ。未来が判ったらつまんないでしょ? あ、でも金の王様に未来視の権限が与えられてるってことは、君たちにとっては未来を視るって嬉しいことなのかな? 過去視もそう? 重宝する? でも残念だねぇ。干渉値とか事象固定の影響から鑑みるに、今はあんまり機能してないんじゃない?」
そう言って笑ったウロに、王は得体の知れない違和感を覚える。
何かがおかしい。ウロからは話の内容を王に理解させようという気を一切感じないし、寧ろひとりごとのようにさえ思えるほど、彼の話は散漫としている。だが、ひとりごとにしては独りよがりさに欠け、王の存在を意識した上で言葉を選んでいるように感じられた。
つまり、語られる一連の話には何がしかの目的があるはずなのだ。このくだらない会話のような何かをすることで、ウロは何かを為そうとしている。
そこまで辿り着いた王は、ぞっとした。ここにいるのが本当に十年前のウロなのだとしたら、彼は十年の空白をものともせず、十年後の王を相手に何かを仕掛けようとしていることになる。
(…………底の無い深淵を覗くような心地だ)
あの黒の王に、あれはヒトには殺せないと言わしめるほどの相手だ。それ相応の覚悟はしていた。だが、話に聞くのと実際に対面してみるのとでは、抱く印象が大きく違った。
(僅かに一手を誤るだけで、国ごと足元を掬われかねぬ)
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