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深淵8
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「ああ、君なら絶対に真実に辿り着くって信じてたよ。だって君はとても優秀な王様だ。だから、僕に“そのつもりがなくても”ちゃんと判ってくれるって判ってた」
「…………お、ぬし、は、」
王の声が僅かに震える。
王は確信した。ウロは間違いなく十年前の時間軸の存在だ。彼が敢えて自身のことを偽り、十年前の存在であるかのように装っている可能性も考えていたが、それは有り得ない。何故ならば、それでは意味がないからだ。
ウロが“敢えて”会話に紛れ込ませてきた情報は、全てひとつの答えに辿りつくようにと用意されたものだ。干渉値を減らすため、過去視は“視るだけの魔法”に制限されていること。干渉値と事象固定とやらの影響で、過去視と未来視の機能が低下していること。現在の円卓に若い王が多い事実は、十年前から容易に予想できることだったこと。極めつけは、金の王は未熟な方が自然であるという発言。これらの要素を拾い出し組み合わせることなど、王にとっては造作もないことだった。
やはり、円卓会議で王たちが出した仮説は正しかった。ウロと神との間には、常に平衡に保たれるべき天秤が存在するのだ。それはいわば、陰と陽のような関係なのだろう。この世界に陰の干渉が成されれば、平衡のために陽の干渉が施される。恐らくは、そのバランスを保てなければ、ウロにも神にも何がしかの問題が生じるのだ。だからこそ、神もウロも互いの出方を窺いながらでなければ動けない。
そしてその干渉は、少なくとも十年前の時点で存在していた。いや、もしかするともっとずっと前からあったのかもしれない。何故なら、現在の円卓の王は皆、ウロの干渉を予期した神によってあらかじめ采配されていたに違いないのだから。
では何故、金の王だけが未来視もままならないほどに未熟なのか。簡単な話だ。ウロも言っていた通り、金の王は未熟でなければならなかった。未来視が発動しにくいことの原因として誤認させるために。
そう、これは銀の王すらも今この瞬間まで知らなかったことだが、“未来視と過去視は神性魔法の一種だったのだ”。
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