アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
深淵13
-
ぶちぶちと神経を引き千切って目玉を引き摺り出したウロは、やはり無表情のまま、それを握り潰した。そして、どこまでも昏く底がない深淵のような瞳が、王の残された片目を見据える。
「……人間ごときが私の過去を覗こうなど、身の程を知れ」
王に吐き出されたそれは、ゾッと底冷えがするような、暗く闇を這うような声だった。
王の全身から汗が吹き出し、手足が震えを訴える。眼球を抉られた痛みなど、最早微々たるものだった。それよりも、神に連なる存在が放つ威圧感で、今にも呼吸が止まりそうだった。
だが次の瞬間、ウロもろとも背景にノイズが走り、投影された過去が大きく歪んだ。過去視の持続時間に限界が来たのだ。恐らく、先程時間軸の移動を試みたときに使った魔力のせいで、これ以上過去を投影し続けられなくなったのだろう。
(っ、いかん……! まだ……!)
王が力を振り絞って顔を上げる。その先にウロを捉えた王は、しかし彼がただ立ったまま無表情に自分を見下ろしているのを認め、限界を悟った。
これ以上は、無駄な足掻きである。
投影された過去が、徐々に薄れていく。映されていた風景が靄のように不明瞭なものへと変化する中、まだわずかに姿を捉えることのできるウロが、盛大にため息を吐き出した。そして、わざとらしくむくれた顔をする。
「は~、さすがはあの人が用意した防衛装置だよ。しかも月神の名前出すんだもん。思わずカッとなっちゃった。僕、あいつのこと殺したいほど嫌いなんだよね」
想定外の言葉に、銀の王が思わず狼狽える。彼の困惑がここまで表面化するのは珍しいことだったが、先程の一件のせいでやや冷静さを欠いている状態なのだろう。
そんな王を見て、ウロがにこりと笑う。今度は、そこに嘲笑の色は感じられなかった。
「僕、認めるべき対象は認めて褒めてあげる、良い子なんだ」
その言葉が最後だった。全ての投影が掻き消え、元の風景、目に馴染む王宮の一室が戻って来る。
だが、王の右目を襲う刺すような痛みは消えない。それは、ウロによって刻まれた傷が幻では済まないことを意味していた。
床に倒れた王を案じて、王獣が駆け寄ってくる。心配そうに顔を寄せて来た王獣の頬に触れ、王は呻くような声を出した。
「全ての円卓の王に、伝えよ。敵は、神に連なるもの、高次元の存在だ。そして、その目的は、恐らく――」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
81 / 197