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王の責務1
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黄の王との会話のあと、風呂を済ませ、寝る支度を整えた少年は、ベッドに潜り込んで赤毛のテディベアを抱き締めた。毛足の長い柔らかな生地に顔を埋めて目を閉じた少年の頭を、トカゲが心配そうにぺちぺちと叩く。
「……大丈夫だよ。ありがとう、ティアくん」
顔を上げてそう言えば、二回首を傾げたトカゲが、少年の頬に口先を押し当てた。まるで、赤の王が少年にそうするのを真似しているみたいだ。きっと、トカゲなりに精一杯少年を励まそうとしているのだろう。そんな心遣いが、とても有難かった。
「……うん、大丈夫。あの人は嘘をつかない人だから」
自分に言い聞かせるように、そう呟いた。
「…………でも、あのね、」
何度か躊躇うような表情を見せた少年が、そっとトカゲを窺う。トカゲはただ、こてりと首を傾げた。
「……今夜は、一緒に寝てくれる?」
断われてしまったらどうしようという僅かな不安は、杞憂だった。何度かぱちぱちと瞬きをしたトカゲが、少年の頬に自分の頬を擦り付ける。そしてトカゲは、もぞもぞと少年とテディベアの間に入り込み、ぷはっと顔だけ出して少年を見上げた。
そんな愛らしい様に、少年の心に巣食う不安が少しだけ解けていく。
(……ありがとう、貴方)
ただ用心棒にするだけなら、このトカゲでなくても良かった筈だ。けれど、赤の王はわざわざこの子を傍に置いてくれた。それはきっと、ひとりぼっちの少年の心までをも守れるようにという優しさからなのだろう。人が苦手な少年のために、人ではなく、強くて、でも愛らしい、この子をくれたのだ。
そんなことに、少年は今更気づいた。
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