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王の責務2
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(……僕の気持ちとか、全然、気にしなくて。居心地が悪いからやめてほしいのに、すぐにキスしてばっかりで。触るのだって、躊躇わないし。別にいらないのに、あれもこれもくれて)
迷惑だと、本当にそう思っていた。少なくとも、初めは絶対にそうだった。
では、今はどうなんだろうか。
大きな手で触れられるのは、やっぱり苦手だ。でも、あの人の手は温かかくて、ときどき泣いてしまいたくなるほどに心地良い。
山ほど貰った贈り物たちは、どれもこれも少年のことを思い、考えてくれたものばかりで、迷惑になるものはほとんどなかった。大きなテディベアだけが、ちょっぴり例外だけれど。
頬に、額に、口に押し当てられる唇は、温かな掌よりもずっと熱くて戸惑うし、胸の奥がざわざわするような不思議な感じがするから、結構苦手かもしれない。でも、決して不快ではなかった。
「……ねぇ、……ティア、くん……」
鈍くなり始めた思考のまま、少年はトカゲの名を呼んだ。なかなか寝付けないだろうと思っていたのに、不思議と瞼が重くて、目が開けられなくなる。もしかすると、赤の王の声や体温を思い出していたからなのかもしれないと、少年はぼんやり思った。
「…………ぼく、どうしたら、いいのかな……」
汚い身体を、愛しているのだと言ってくれた。母にすら望まれなかった子供を、心から望んでくれた。この世の何よりも美しいあの人は、いつだってそうやって少年に全てをくれる。ならば少年は、どうしたらそれに報いることができるのだろうか。
少年が今更ながらにそんなことを考え始めたのは、王妃との会話と、王の死の可能性がきっかけだったのだろう。柔らかく名を呼んでくれるあの声が失われてしまうかもしれないという恐怖が、ただ享受するだけだった少年の心を変えたのだ。
あの王に報いたいのだと、そう言う少年に、トカゲが首を傾げる。
トカゲが何を考えたのかは判らないけれど、彼が困惑していることだけは少年にも判った。それも、少年の言葉の意味が判らなくて困惑しているというよりは、意味を理解しているからこそ困惑しているような様子だ。
どうしてそんな反応をするのだろうと内心で首を傾げた少年は、しかし気づく。そして彼は、柔らかな微笑みを浮かべた。
「……うん、そうだね」
目を閉じ、緩やかな微睡へと身を任せる。眠りに入る直前の、夢の中にいるようなふわふわとした心地の中で、少年は優しく自分の名を呼ぶ声を聞いた気がした。
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