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王の責務4
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手早く服を羽織った王が、寝室を跳び出す。執務室へ向かって走りながら、彼は付き従う武官長に対して口を開いた。
「手短に状況を説明しろ!」
「はっ! 本日未明、都市の外壁付近に突如として大量の砂蟲《サンドワーム》が出現し、直後その身体に魔導陣が浮き上がったとのこと!」
「なるほどな! 連中、砂蟲自体に魔導陣を仕込んでやがったのか! そりゃ見つからねー訳だ!」
砂蟲は、ほとんどの時を地中深くで過ごす生き物である。その深さ故に、地上から彼らの気配を探るのはまず不可能と言って良いだろう。その身体に仕込まれた魔導陣も、また同じことである。
「砂蟲は魔導陣の発動と同時に弾け、そこから魔導師とその使役魔が現れたとのことです! 全ての都市にて証言が一致しておりますので、まず間違いないかと!」
「ふっざけんなよあいつら! うちの生態系めちゃくちゃにする気か!」
黄の王にしては珍しく、苛立ったような声が吐き出された。
「被害状況は!」
「現在のところ王軍が善戦しているため大きな被害はないようですが、個々の敵が強力で防戦一方だとの報告を受けております! このままでは、敵に攻め切られるのも時間の問題かと!」
「はぁ!? 相手はただの魔導師だろ!?」
現状円卓が入手している情報を鑑みる限り、帝国が所持している戦力の内、警戒が必要なほどの力を持つ魔導師は、ほんの一握りだった筈だ。そしてその一握り以外に苦戦を強いられるほど、黄の国の国軍はやわではない。
何か見落としていることが有るはずだ。歯噛みした王が、すぐさま記憶を探る。時間にして瞬き数回ほどの後、はっとした顔をした王が、武官長を振り返った。
「魔導師は全員まだ生きてるのか!?」
「は……?」
「魔導師死んでねぇだろうなって訊いてんだよ! どうなんだ!」
王の剣幕に気圧された武官長が、しかし瞬時に首を振る。
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