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王の責務5
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「そこまでの確認は取れておりません!」
「っくそ! じゃあ十中八九死んでるな!」
術者が死ねば、使役魔は暴走し、その恨みを術者と同じ生き物に向ける。それが帝国が使う魔導だ。そしてそれは恐らく、未熟な魔導師と熟練の魔導師の力の差を埋めることに繋がる。
(この前金の国でやったのは、その性能テストってことかよ!)
空間魔導で全ての都市に同時に魔導師を派遣し、直後に魔導師の命を絶つ。そうすれば、残るのは怒りによって何倍にも力を膨れ上がらせた魔物だけだ。そうなった魔物は統率することこそできないが、単純な力だけで言えば半端な魔導師が付随しているときよりもよほど戦力になる。今回のように敵しかいないような場所に送り込むには、うってつけだろう。
(わざとらしく十二国中に設置されてた魔導陣は全部ブラフ! 明らかにこれが本命だ! それはつまり、ずっと前からアマガヤキョウヤがこの国に来ると予測してたってことになる!)
「クラリオ王陛下! 王軍へのご指示を!」
背後で武官長が叫ぶ。判っている。判っているのだ。だが、どうすれば良い。
王軍はもうこれ以上ないほどに各地へ割いてしまった。更に王軍を投入すれば王都の守りがほとんどなくなってしまうし、何よりも今からでは間に合わない。
万全を期した。あらゆる可能性を考慮して、ぎりぎりまで王都の戦力を削った。だからこその今だ。だからこそ、今こうして不測の事態に耐えられている。だが、クラリオが事前に手配できたのはそこまでだった。
「……仕方ねぇ」
辿り着いた執務室の扉に手を掛けて、王が呟く。
「クラリオ王陛下!」
武官長の叫びに、王は振り返った。そして、頭をがしがしと掻いて叫ぶ。
「うるせー! 指示なんてそんなもん、各個撃破だ各個撃破! 倒せるところから確実に倒してけ! そんでもって死ぬ気で国民守れ!」
投げやりと言えば投げやりなその指示に、武官長が思わず目を剥いてしまう。
「し、しかしながら陛下、」
「しかしも案山子もあるか! お前ら王軍の一員なんだったら少しは自分で考えて自分で動けっつっとけ! 足りねぇもんは全部俺が補う! だから国民最優先で好きにやれ!」
王の言葉に、武官長が一瞬押し黙る。そして王の言葉を反芻し、彼はその場に膝をついて深々と低頭した。
「勅命、確かに承りました」
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