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王の責務7
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その背を見送ってから、王が執務室の扉を開ける。そしてすぐに部屋の窓を開け放った王は、空に向かって大きく叫んだ。
「リァン!」
呼び声に応え、雷の獣が空を駆けてやってくる。だが、王獣の到着を待たず、王は続けて叫んだ。
「国中を駆け回って全軍のサポートをしてくれ! お前の脚だったらできるだろ!」
王の指示に、しかし王獣は判りやすく躊躇うように王を見つめる。その躊躇の正体が判っている王は、安心させるように自信に満ちた笑みを浮かべた。
「王都の守りは任せとけ。お前の分まで、俺がしっかり働いてやる」
王の言葉に、王獣が目を細める。未だ僅かな躊躇いを残す獣は、しかし王が意見を曲げないことを悟ったのか、ほんの少しだけ責めるような目をして彼を見た。それに向かって王が肩を竦めてみせれば、低く唸った獣が王から顔をそむける。そして、大きくひと声咆えた王獣が空を蹴った瞬間、光と化した獣は、彼方へと消えていった。
思うところはあったようだが大人しく指示に従ってくれた獣を見送ってから、王は窓を閉め、絨毯で覆われた床に胡坐をかいて座った。
王獣リァンには遠く及ばないが、|雷光鳥《ユピ》は速い。もう少しもすれば、王の出した指示が王軍にまで届き始めるだろう。だから、その前に始めなくてはならない。不足分は補うと言ってしまった以上、不足が顕著になる前に動かなければ、余計な不安を煽ってしまうだろう。
王が、大きく息を吸って、吐く。
「……さーて。風霊ちゃんに火霊、準備はオッケー? 俺は全然オッケーじゃないけど、そうも言ってらんないから始めちゃうよ。まともに使ったことないし、そもそもここまでの規模は想定してなかったから、杜撰なところがたくさんで迷惑掛けちゃうと思うけど、……よろしくね」
言い置いてから、もう一度だけ深呼吸をする。僅かに速い鼓動を落ち着け、そして、王は静かに目を閉じた。
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