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王の責務8
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「奔る閃光 轟く咆哮 願いは空へ 誓いは大地へ 果てに至る奇跡の名の元に 杭は今ここに穿たれた」
バチバチと音を立てて、王の身体から細い雷が散った。
「吹き荒れる風よ 砂を灼く炎よ 我は行く末を見定める者 我はこの世全ての雷《いかずち》を統べる者 なればその遠雷は 須らく我の手に集うべし!」
王の全身から魔力が奔流となって迸り、見る見るうちに小さな無数の雷へと変質していく。そうして生まれた細かな雷たちは、光の集合体となって王の身体に纏わりついた。
クラリオがこの魔法を創ったのは、一年ほど前。思いつくままに魔法として確立したは良いが、あまりの使い勝手の悪さに実用性なしと判断せざるを得なかった代物である。今だって、できることならば触れたくはない。だが、そうでもしなければこの状況を打破できないのだ。
だから王は迷わない。賭すべき命があるのならば、それはいつだって国王自身のものだ。
「――“轟雷は我が手に在りて《トル・マネハーレ・ケラヴノス》”!」
瞬間、王の周囲に留まっていた雷たちが一気に弾けた。王を中心に凄まじい勢いで全方位へと奔っていくそれを追うように、王が叫ぶ。
「効果範囲はリィンスタット王国全土! 後の判断は俺がする!」
空気を切って駆ける雷が、遥けき彼方を目指して広がっていく。光の速度が国境へと至るまでの間は、僅か一瞬のことだった。
王の身体から放たれる雷の波が国土全体へ行き届いた直後、なんの前触れもなく膨大な情報が王の脳に叩きつけられた。その余りの衝撃に、王の身体がぐらりと傾く。だが、意地で腰の曲刀を引き抜いた彼は、それを自身の腿へと突き立てた。その痛みでなんとか意識を保った王が、喘ぐように大きく息を吐く。
(……くそっ! トぶところだった……!)
王の脳内に直接飛び込んできたのは、リィンスタット王国全土の映像情報だ。王が用いたのは、王自身が創り出した超広域魔法だったのである。
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