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王の責務11
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兵たちはおろか師団長にすら、どんな原理で遠く離れたこの地に雷魔法が発動したのかは判らない。だが、自国の王が民を守るために落雷を喚んだことは明白だった。
王からの指示は正確に聞き届けていた。足りないところは全て自分が補うから、お前たちはお前達の思う最善を尽くし、国民を守って見せろと。お前達が失敗した分は自分がカバーするから、恐れずに己の役目をまっとうしろと。確かにそう言われた。
そしてその真意が、これなのだ。王軍の不足を補うため。王軍すらをも含む、全ての国民を守るため。遠く離れた王都にいる王は、何らかの力で国中の戦況を把握し、軍の手が回らなかった敵だけを正確に仕留めている。
およそ人の成せる業ではない。あまりにも強大な魔法は、王の魔力を根こそぎ奪い尽くさんばかりに消耗させるだろう。敵を選び、本当に必要な場面においてのみ雷を落としていることからも、それは容易に察せられた。きっと、手当たり次第に落としていては、すぐに限界が来てしまうのだ。そんな不安定な魔法を無理矢理発動しているとなると、王の身に降りかかる負担はどれほどのものだろうか。
だが、民は皆知っていた。それでもその魔法が必要ならば、王は必ずやってのけると。それがどれほど己が身を蝕もうとも、決して一歩も引きはしないと。
ならば、王軍たる彼らがそれに応えぬ訳にいくだろうか。
「一体一体を確実に仕留めることに集中しろ! 敵を取り逃がすことを恐れるな! 我々が取り溢したとしても、必ず陛下が掬ってくださる!」
師団長が叫べば、より一層大きな声がそれに応える。彼らの目にもう迷いはなかった。王を信じ、ただ己の成すべきことを成せば良いのだと、魔法を以て王がそう伝えてくれたのだ。
同様の現象は、国内の各地で起こっていた。その結果王軍の士気は上がり、徐々にではあるが戦況は優勢になりつつあった。国中を駆け回り、少しずつだが確実に敵の数を減らしていった王獣の働きも大きいのだろう。そしてそれでも手が回らずに取り溢された分を、王が確実に仕留める。王あっての戦法ではあるが、限りなく理想に近い采配だ。
リィンスタット王国は、まさに国が持てる全力を尽くし、未曽有の事態に向かっていた。
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