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王の不在2
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そう言って退室した部下と入れ替わるようにして団長の傍に来た別の部下が、地図を見て首を捻る。
「しかし、国内に魔導陣がないことは薄紅とか紫のとこの王様が確認した筈ですよね? じゃあ魔物はどうやって気づかれずに国内に潜り込んだんだと思います?」
問われたガルドゥニクスが低く唸った。
「お前、俺がそういう細かいことを考えるのが苦手だって判ってて訊いてるだろう?」
「あ、バレました?」
あはは、と笑った部下の頭を、ガルドゥニクスの隣に控えていた副団長のミハルトが容赦なく殴る。
「いってぇ!」
「団長に無礼な真似をするな。殴るぞ」
「もう殴ってるじゃないですかぁ! ていうか副団長だっていっつも団長に失礼なこと言ってる癖に、自分のことは棚上げですか!」
「私は良いんだ」
「うわ、出た出た! そういうの差別って言うんですよ!」
文句を言う部下を無視して、ミハルトはさっと周囲を見た。
「他に何か情報を持っている者はいないか? 不確定なものでも良い」
ミハルトの言葉に、あっと一人の部下が声を上げる。
「ほんとに未確認の情報なんですけど、なんか、飛行型でもない魔物が空から降ってきたみたいな話は聞きましたよ。つっても現場は大混乱だろうから、見間違えかもしれないんですけど」
「空から?」
なんだってまた空から降ってくるんだ、と首を捻ったガルドゥニクスの横で、顎に手を当てて思考していたミハルトは、僅かに目を見開いて地図を掴んだ。
「ミハルト?」
「……渡りだ」
「わたり? なんだって?」
小さな呟きに首を傾げたガルドゥニクスを、ミハルトがばっと見上げる。
「渡り鳥です! 今はちょうど、東の大陸からここへと渡り鳥がやってくる時期なんですよ! その渡り鳥に魔導陣を仕込んでいたとしたらどうです? 擬似的に空に魔導陣を置くことができるとは思いませんか?」
突飛といえば突飛な発想だ。ガルドゥニクスには、果たして生物に魔導陣を仕込むなどという芸当ができるのかどうかすらも判断できない。だが、現状において最もそれらしい説ではあった。
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