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王の不在3
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「なるほど。確かにそれなら説明がつくと言えばつく。だが……」
難しい顔をしたガルドゥニクスに、ミハルトが頷く。
「はい。それでは数が少なすぎます」
現れた敵の数と渡り鳥の数が合わないのではない。寧ろ、報告を聞く限り、毎年やってくる渡り鳥の数と敵の数とは釣り合っているようにさえ思えた。つまりミハルトは、グランデル王国を相手取るには渡り鳥の数が不足していると言っているのだ。
「もしこの方法で敵が送り込まれているとしたら、鳥たちが魔導陣の発動に耐えられるとは思えません。恐らく、発動と共に肉体が弾けるなりすると考えると、魔導陣の発動は一羽につき一度きり。確かにこの時期の渡り鳥は群れを成して訪れますが、それでもグランデル王国を相手取るには陣の数が不足していると言って良いでしょう。現に、我々中央騎士団は未だに首都に留まっているどころか、ほとんどが待機状態で済んでいる訳ですから。けれど、それくらい帝国側も判っているはず」
「……帝国の狙いは別にあり、これは陽動にすぎない、か?」
そう言ったガルドゥニクスに、ミハルトが頷く。
「はい。そう考えるのが妥当かと。…………つまり、恐らくは宰相閣下の読み勝ちです」
そう言って肩を竦めてみせたミハルトに、ガルドゥニクスもまた、城を留守にしているグランデル王国宰相のことを思い浮かべた。彼はガルドゥニクスよりも一回りほど若いが、常にその重責に見合った働きを見せていた。今回もまた、その例に漏れず役目を果たしてみせることだろう。ならば、王立中央騎士団の団長としてガルドゥニクスがすべきは、宰相に任された首都の防衛と、有事の際の柔軟な対応である。
「よし、中央騎士団は基本的に持ち場にて待機だ! これ以上の事態にならない限り、うちの団の戦力は温存する方向でいく!」
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