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王の不在6
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「空から魔物が降って来るとの報告から予想するに、恐らく帝国は渡り鳥を利用して空間魔導を使っているのでしょう。鳥たちの動向に注意を払いつつ、住民たちを内陸部へと誘導してください。必要に応じて、大型騎獣を使っても構いません。砦より南側の魔物については、基本的に海浜部の駐屯所からの人員だけで対処できるかと。報告を聞く限り、南に行くほど魔物の数が減るようですから」
レクシリアの指示に、ジルグは眉を顰めた。魔物の数が少ない海浜部の国民を避難させるというのは、海の守りを諦め、万が一のときに国民に被害が及ばないようにするための措置だと思ったのだ。
「陽動だと判っていて、それでも海の守りを捨てると言うのですか? 俺には、帝国が敢えて魔物の比重を内陸側に偏らせ、我々を内陸に留めようとしているように思えます。だとしたら、宰相閣下が予想した通り、敵の本命は海にこそあると考えるのが自然だと思うのですが」
ジルグの言葉に、レクシリアが頷いた。
「私も貴方と同じ考えですよ。しかし、こちらの数を考えるとこれが最良の策なのも事実でしょう。国民に被害を及ぼす訳にはいきません。……それに、私は海の守りを諦める気などありませんよ。海には私とグレイが行きますから。幸いなことに、この砦から海まではそこまで遠くない。ライガの脚ならばすぐに辿りつける距離です」
これなら問題ないでしょう、と言ったレクシリアに、ジルグが再び顔を顰める。
「……お一人で対処できると?」
「グレイもいるので一人ではありませんよ」
「ご冗談を。魔術師兼秘書官では戦力になりません」
食い下がるジルグに、レクシリアがにっこりと微笑む。
「ええ、確かにあれは戦力にはなりません。けれど、あれにはあれなりに、冠位錬金魔術師としてできることがある。ですからほら、早く団に指示を出してください。急がなくては、守れるものも守れなくなってしまいますよ」
そう急かされ、ジルグが渋々ながらも団員たちにレクシリアの策を伝える。だが、頑固な騎士団長は未だにレクシリアとグレイの二人だけを海浜部へ送るのに納得していないようだった。勿論、優秀な騎士団長は自分が気に食わないからという理由でレクシリアの決定を邪魔するようなことはしないだろう。けれど、できることなら納得の上で送り出して貰いたいものである。
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