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王の不在8
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夫の言葉を遮って話を進めるマルクーディオに、今度はレクシリアが慌てたように口を開く。
「おいちょっと待て馬鹿。人が少ないっつってんだろうが。これ以上砦から人を割いたら、内陸部の魔物に対応し切れなくなる可能性が、」
「お兄様こそ何を仰っているんです! 栄えあるラルデン騎士団を侮り過ぎなのでは? 数十人程度の穴、ジルグが一人で埋めてみせますわ! そうでしょう、ジルグ!」
強気な青色の瞳に見つめられ、ジルグは一瞬驚いたように固まったあと、すぐさまこくこくと頷いた。それを見て満足そうに微笑んだマルクーディオが、レクシリアを見る。
「ほら! 判ったら準備なさって! 私はもういつでも出発できますわ! ジルグ、貴方も早く団員さんに用意して頂いて!」
マルクーディオに急かされ、ジルグが慌てて団員の確保を始める。表情の変化が少なく無口な団長は、相手に威圧感を与えることが多いような男だったが、妻の前では形無しなようである。
一方のレクシリアも妹に尻を叩かれ、出発の支度をしに自室へと急いだ。
(お転婆だお転婆だとは思ってたが、ここまでだとは思ってなかったぞあの馬鹿……!)
心の中でそんな悪態を吐いたレクシリアだったが、実際マルクーディオの指摘は正しかった。ここの団に負担を掛け過ぎる訳にはいかないと考えて、グレイと二人で海に向かうことを提案したが、正直なところそれでは心許ない。勿論、それでもなんとかできる自信があるからこその采配だったのだが、あの妹には兄がかなりの無理をしようとしていることがバレてしまったようだ。
(いや、それとも、グレイの仕業か?)
有り得ない話ではない、とレクシリアは思った。自分を心配したグレイが、わざとマルクーディオに情報を漏らし、彼女にこうして貰うように頼んだのではないだろうか。
そんなことを考えながら部屋の扉を開けたレクシリアは、中の光景を見て呆れたような諦めたような表情を見せる。
「…………グレイ」
「おや、遅かったですね。けれど安心してください。出発の準備は概ね整っています」
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