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王の不在16
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「グレイ!」
「待ってください! あと少し……!」
展開した魔術式に更に式を書き加えているグレイが叫ぶ。その間もグレイの手はよどみなく動いているが、式の完成にはまだ時間が必要なようだ。
舌打ちをしたレクシリアが、背にあった弓を構えて矢をつがえる。それを見たマルクーディオが、すかさず風霊と火霊の名を呼んだ。
「お兄様の矢に宿って、制御と威力の増大を!」
直後、レクシリアが矢を放つ。マルクーディオの魔法を受けた矢は空を裂き、上陸した魔物たちの元へと到達して爆発した。そのまま二射三射と矢を放って確実に魔物たちを狩っていくレクシリアだったが、やはりこの程度の攻撃では限界がある。じわじわとこちらへ向かってくる魔物の群れに、レクシリアは再び舌打ちをした。だが、そんな彼に向かってマルクーディオが叫ぶ。
「そのための騎士団ですわ! 不足分は彼らと私が補います! お兄様はご自分の役目に集中なさって!」
「ああ、判ってる!」
マルクーディオの言う通り、レクシリアの矢が届かなかった魔物たちには、騎士団の各小隊が的確に対応を始めている。人数こそ少ないが、彼らとて軍事力に名高い赤の国の騎士団員だ。たとえ数で負けていても、そう簡単に魔物を防衛ラインに踏み込ませたりはしない。
しかしそれでも、レクシリアは矢を射るのをやめなかった。敵の数を減らせば減らしただけ騎士団にかかる負担は軽くなり、防衛の成功率も上がるからである。
だがそのとき、蛇のような魔物がその巨躯を大きく逸らせた。そしてそのまま、魔物ががぱりと口を開く。大きく開いた口先に水が集中したかと思うと、それは見る見るうちに巨大な球を象り、次の瞬間、凄まじい速度で前方へと放たれた。その軌道が描く先には、レクシリアたちが立つ小丘がある。
守るべき宰相の元へと向かった水塊に、下で魔物を抑えていた騎士たちが目を瞠った。これほどの攻撃ならば、小さな丘程度簡単に抉り取ってしまいそうである。そんなものが直撃したら、レクシリアたちも無事では済まないだろう。だが、離れた場所にいる騎士たちではどうすることもできない。
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