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王の不在18
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レクシリアが発動させようとしているのは、彼には分不相応すぎる強大な魔法だ。レクシリアの魔力では、詠唱途中で魔力切れを起こして死にかねないほどのものである。だがそれを、グレイの魔術が無理矢理可能にしている。
鉱石から細く流れ込む光は、長い月日を掛けて少しずつ鉱石に貯蔵されたレクシリアの魔力だ。それを抽出してレクシリアに直接流し込むことで不足している魔力を補い、通常では絶対に扱えない魔法の発動を実現している。
これこそが、グレイを冠位錬金魔術師の座につかせた魔術である。レクシリアの支えになりたい一心で、血の滲むような努力の末に生み出した、魔法師専用の魔力増幅魔術。使用することで対象の魔法適性を超えた魔法を使えるようにする、正真正銘グレイオリジナルの魔術だ。
だが、想像を絶する繊細さと緻密さを求められるこの魔術は、未だ完成形とは言い難いとグレイは思っている。現にグレイは今、引き出している現象の負荷で今にも崩壊しそうな式を繋ぎ止めるのに必死だった。壊れそうな式を見つければ、すぐさま代替式を用意して書き換え、レクシリアに渡す魔力量に僅かでもブレが生じれば、魔力量を調整している箇所の式を改変する。この作業を、レクシリアが魔法を発動し終わるまで繰り返し続けなければならないのだ。とてもではないが、実戦に使える代物ではない。
何より、グレイが送り込む魔力の量を僅かでも間違えれば、レクシリアは死んでしまうのだ。少なすぎれば魔力が枯渇し、多すぎれば器が耐えられなくなって身体が弾けるだろう。だからグレイは、レクシリアの消耗具合を見ながら、常に適切な魔力量を見定めなければならなかった。
(落ち着け! 落ち着いて全部見ろ! リーアさんも! 式も! 全部!)
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