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頂きに立つもの1
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未曽有の事態に緊張が高まる黄の国では、未だ予断を許さぬ状況が続いていた。
赤の国を襲った魔物の数と比較して黄の国でのそれは圧倒的に多く、国内の兵力のみで対応するのには限界があったのだ。クラリオが全土に魔法を展開させることでなんとか凌いではいるが、事態の収束にはまだまだ時間が掛かるだろう。
想定よりも速い勢いで削れていく己の魔力に、黄の王は大きく顔を歪めた。
緊急に対応が必要な魔物については、王と王獣の力で大方排除できたと見て良い。少なくとも、最初に比べれば遥かに状況は好転したはずだ。だが、だからといって王の助けなしで切り抜けられるかというと、現時点ではその確証は持てない。だから、いくら疲労しようとも魔法を切り上げる訳にはいかなかった。
脳を揺らす酷い頭痛は止まらず、いよいよ王の視界は霞み始めていたが、気絶しそうになる度に手にした剣を傷口に突き立て、なんとか意識を保つ。出血こそ激しくないが、何度も繰り返された行為は肉を抉り、脚の傷は見るに堪えないほど無惨なものになっていた。
収まることのない吐き気は胃の中が空になってもなおクラリオを苛み、彼は何度目になるか判らない胃液を吐き出した。吐しゃ物に汚れて地面に這いつくばるその姿は、王と呼ぶにはあまりに憐れであった。
己の情けない姿を思ったクラリオが、うっすらと口の端を吊り上げる。
(……人払い、しといて、良かったな…………)
王は国の象徴だ。故に、いついかなるときも泰然自若としなければならない。こんな姿を、国民に見せる訳にはいかなかった。
(でも、ちょっとだけ、慣れて来た……)
魔法の扱いにではない。痛みや不快感にだ。
無茶な魔法を行使したことによる副作用を緩和することはできないが、副作用の症状をなんとか耐えることはできるようになってきている。
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