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頂きに立つもの4
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敵の猛攻を紙一重で避けて数歩の距離を取った王は、一度強く剣の柄を握り締めたあと、向かってきた魔物に向かいその切っ先を閃かせた。左下から斜めに振り上げられた刃が、魔物の腹から肩にかけてを一刀両断する。
恐らくは、魔物の切断面から覗く核のようなものが心臓に当たる部分だったのだろう。その核ごと斬撃を受けた魔物は、悲鳴を上げる暇すら与えられずに呆気なく砕け散っていった。
剣のひと振りのみで見事に魔物を仕留めてみせた王だったが、別に驚くことなど何もない。
円卓の王たちが持つ武器は、全て赤の国にて作られた最高級の逸品だ。その他大勢が持つそれらとは比べ物にならないほど優れたその刃に、斬れぬものはほとんど存在しない。それは、誰もが知っていることだった。
砕け散ってきらきらと光る細かい結晶となった魔物を前に、クラリオの表情が大きく歪む。
そして彼は、振り上げた剣をくるりと逆手に握り直し、振り返ることなく一気に後方へと突き刺した。
「ッ……!」
引き攣るような小さな悲鳴がクラリオの耳元で聞こえ、背後で何かがずるりと倒れる音がした。
剣を手放した王が、ゆっくりと後ろを振り返る。その目に映ったのは、王の剣で腹を貫かれたアメリアの姿だった。
魔物と対峙しているさなか、短剣を手にした彼女が背後に忍び寄っていたことを、クラリオは知っていた。アメリアの動きは素人そのもので、武に優れた王ならば容易に対処できるものだった。それこそ、赤子の手を捻るよりも容易く。
アメリアのすぐ傍に、王が膝をつく。自らが彼女に刺した刃は肉に深く埋もれ、きっともう彼女が助からないだろうことをまざまざと王に突きつけた。だが当然の結果だ。王に彼女を生かすつもりはなかったのだから。
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