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目覚め4
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そんなことを考えている間に地面に着地したアグルムが、さっと少年を下ろして再び走り出す。腕を掴まれているので大人しくそれについて行くことしかできない少年は、アグルムの向かっている先にある建物を見て、内心でああと呟いた。
すぐ目の前に迫っているあれは、騎獣舎だ。あそこで騎獣に乗って王都の外を目指すつもりなのだろう。確かにあの騎獣舎に行くならば、城内を突っ切ってあのバルコニーで跳び下りるのが最短ルートだ。それならそれで言って欲しかったものだが、アグルムはあまり口数が多い方ではないから仕方がないのかもしれない。
ようやくたどり着いた騎獣舎の扉に、アグルムが手を掛ける。だが、その扉をアグルムが開けた瞬間、何か凄い力に引きこまれるように、アグルムと少年の身体が騎獣舎の中へと引っ張られた。
抵抗することもできないまま、二人の身体が騎獣舎の中に転がり込む。咄嗟に少年を抱き寄せて受け身を取ったアグルムは、身体に触れた床の感触が慣れ親しんだ騎獣舎のものではないことに気づき、すぐさま身を起こした。
(ここはどこだ……!?)
少年を腕に収めたまま周囲を見回したアグルムの目に入ったのは、不気味に曲がって枝分かれした木々たちに囲まれた空間だった。土の地面に、木々の隙間から覗く暗い空。少なくとも、リアンジュナイル大陸にこんな場所は存在しない。
トカゲを見やれば、彼は警戒するように周囲に視線を巡らせていた。やはり、安全とは言い難い場所のようである。
一方の少年も突然の出来事に混乱を隠せないようで、やや怯えた目をしてアグルムを見てきた。
「あ、あの、ここ、は……?」
「判らない。少なくとも俺が目指していた騎獣舎の中ではないな。……自然に考えるならば、どこか別の空間に飛ばされたと判断するのが妥当だ」
アグルムが腰の曲刀を引き抜きつつそう呟いたとき、ぱちぱちと乾いた拍手が周囲の空気を震わせた。
「ご明察です」
その声に、少年は聞き覚えがある。やや粘着質で、少年の肌に纏わりついてくるような、嫌な声だ。
小さく身体を震わせた少年の背を、アグルムが一度だけ叩いた。そしてアグルムは、少年を背に庇うようにして声の方へと身体を向けた。
「……帝国の空間魔導師、デイガー・エインツ・リーヒェンだな」
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