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目覚め7
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そこまで思い至った少年が、はっとしてトカゲを見る。先程から何度も何度も試すように口を開けたり閉じたりしているトカゲもまた、同じなのではないだろうか。いかに高位の幻獣と言えど、魔法と同じ機構で炎を生み出しているのならば、トカゲもまた自身の炎を封じられたことになってしまう。
トカゲの様子を見る限り、少年のその考えは大方正しいように思えた。
(ど、どうしよう。確か炎獄蜥蜴《バルグジート》の場合、最初の火種が火霊による炎で、それを固有能力によって体内で増幅させているって、あの人が……)
そこまで考えた少年は、はたと気づいて、上着のポケットに入れっぱなしだった魔術具を取り出した。炎を食べるトカゲのために、グレイに作製して貰った錬金魔術式の卓上ライターである。
炎獄蜥蜴が最初の種火のみを魔法機構に頼っていて、その後の工程は全て己の固有能力のみで行っているのだとしたら、種火さえ与えれば力を発揮できる筈だ。
そんな少年の手元を見たトカゲが、丸い目を細めて少年を見上げてから、ライターを持つ手元へとするりと移動した。そしてトカゲの小さな手が少年の手を叩くと同時に、少年がライターの魔術を発動させる。
「お願い! ティアくん!」
少年の叫びと共に噴き上がった炎を、大きく口を開けたトカゲが吸い込む。そのままごくんと炎を飲み込んだトカゲは、少年の腕を跳び下りて、アグルムと対峙している一ツ目の魔物へと顔を向けた。
「っアグルムさん! 避けてください!」
少年の声に反応したアグルムが魔物から大きく距離を取るのと同時に、トカゲの口がぱかりと開いた。そしてそこから、轟という音と共に灼熱が吐き出される。
熱風を撒き散らしながら魔物に向かった炎が、見事にその片腕を捉え、見る見るうちに魔物の肉を焼いていく。だが、そこに砂蟲《サンドワーム》を焼き尽くしたときのような威力はなかった。
(やっぱり、精霊の火じゃないと威力が落ちちゃうんだ……!)
最初こそ魔物の腕を燃やしていた炎だが、すぐにその勢いは衰え、火力は徐々に弱まりつつあった。この様子では、あと少しもすれば炎は掻き消えてしまうだろう。
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