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目覚め9
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「はっ、炎獄蜥蜴《バルグジート》の名が泣きますね」
小馬鹿にしたような顔をでトカゲを見下ろしたデイガーが、次いで少年に視線を戻してわざとらしく首を傾げる。
「いやしかし、そのトカゲは案の定厄介ですねぇ。これはもう、遊んでいないでエインストラを連れて行ってしまうべきでしょうか」
そう言ったデイガーの手が、少年に向かって伸ばされた。ひっと小さな悲鳴を引き攣らせた少年が、縋るように後ろを振り返る。だが、アグルムは尚も魔物と交戦中だ。二体の巨大な魔物の猛攻をいなすことで精一杯な彼に、少年を助ける余裕があるとは思えなかった。
残る護衛であるトカゲがすぐさま少年の元へと駆け寄ったが、その小さな身体をデイガーの爪先が蹴り上げた。抵抗することもできずに軽々と吹っ飛んだトカゲに、少年が再び悲鳴を上げる。
「ティアくん!」
「さあ、行きましょう、エインストラ」
デイガーの手が伸びてくる。それを捉えた少年の目が、大きく見開かれた。
この手に捕まってしまったら終わりだ。きっと誰の手も届かない場所に連れて行かれてしまう。もしかしたら、血を搾り取られて死んでしまうかもしれない。
それは駄目だと、少年の奥底の何かが叫ぶ。
死んでは駄目だ。死ぬわけにはいかない。終わる訳にはいかない。生きなければならないのだ。いや、生かさなければならないのだ。それこそが、自分が生まれた理由なのだから――!
潤みに満ちた少年の瞳が急速に乾き、瞳孔が細く絞られる。そして唐突に、少年の纏う空気が一変した。
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