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目覚め12
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(っ、それは駄目だ!)
刀を握り直したアグルムが、『迅』の元へ行こうと足を踏み出す。だが、そんな彼のつま先を何かが叩いた。眉をひそめて目を下にやれば、つま先にくっついていたのは赤いトカゲだった。そのままするするとアグルムの肩まで移動したトカゲが、彼の頬をぺちりと叩く。
「どうにかするだと? だがお前はもう炎を吐けないんじゃないのか?」
アグルムの言葉に、丸い目を更に丸くしたトカゲが首を傾げた。
「何故? ……そう言えば、何故だろうな……。いや、今はそれどころじゃない。早く『迅』をどうにかしなければ」
そう言ったアグルムが、トカゲに向かって言葉を続ける。
「何か考えがあるんだろう。聞くだけ聞いてやる」
そんなアグルムの肩を、トカゲがぺちぺちと叩いた。
「……は? いや待て、お前それはとてもじゃないが作戦と呼べるようなものでは、」
咎めるようにそう言ったアグルムに、しかしトカゲはそれを無視してぴょんと地面に飛び降りてしまった。
「おい!」
思わずアグルムが叫んだが、トカゲが彼の制止を聞く様子はない。アグルムの言うことなど歯牙にもかけないトカゲに大きく舌打ちを漏らしてから、アグルムは駆け出した。何を言っても無駄だと言うのならば、癪な話ではあるがトカゲの策に乗るしかない。
魔物を息の根を止めようと立ち回る『迅』に気を配りつつ、常に魔物の死角に来るように移動したアグルムが、両手で曲刀を構えて腰を低く落とした。そして、先程目玉を突かれた魔物の方に『迅』が狙いを定めたのを察知すると同時に、アグルムが地面を強く蹴る。
魔物は『迅』に気を取られていて、死角から迫るアグルムには一切気づいていない。それはもう一体の魔物も同じだった。そしてアグルムの攻撃は、的確にその隙を突いた。
魔物の背後からその足元を横切るように駆け抜けながら、膂力に任せて曲刀を振り抜く。魔物の二足を完璧に捉えた刃は、その強靭な腱を一刀の元に断ち切った。
大きく叫びを上げた魔物の身体が、ぐらりと前に傾く。その出来事は『迅』の予想の範囲外だったのだろう。ちょうど魔物の正面に位置していた『彼』の目が、自分の方へと傾いてきた巨体を見てやや驚いたように見開かれる。そしてそのタイミングを見計らったかのように、その眼前に小さな身体が跳んできた。
赤いトカゲである。
いつの間にやら魔物の身体によじ登っていたらしいトカゲが、そこから『迅』の顔目掛けて跳んだのだ。
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