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炎に焦がれる1
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「何故だ! 何故貴様が!? ここに居たのは、確かにリィンスタットの兵士だった筈だ!」
先程までの余裕を完全に失った様子のデイガーが、取り乱したように叫ぶ。それを見た男――赤の王は、デイガーに視線を投げて挑発的な笑みを浮かべた。
「そうとも。私はたった今まで、確かにアグルム・ブランツェだったからな」
「っ、まさか! 幻惑魔法でも使ったと!?」
驚愕の目を向けて来るデイガーに、王が目を細める。
「察しが良いではないか。その通りだ。故に、称賛されるべきは見事な腕前で魔法を完成させたランファ王と、この茶番に付き合ってくれたリィンスタット王だな」
そう言った王の腕によじ登ったトカゲが、そのまま肩まで移動し、その頬をぺちぺちと叩いた。
「ははは、そう怒るな。敵を欺くにはまず味方からだと、よく言うだろう。ああ、悪かったとは思っているとも。キョウヤにも随分心配を掛けてしまったようだしな。なあ、キョウヤ」
王に名を呼ばれた少年だったが、残念ながら現状の彼では返答をすることができないようで、ただひたすら、ぽーっとした目で王を見つめるばかりだった。
その表情が、ありありと彼の思いを伝えている。
(……きれい…………)
赤の王は、元々とても美しい男だ。見た目がどうとか、そういうことではない。仕草だとか、態度だとか、纏う空気だとか、醸し出す雰囲気だとか。そういったものが全て合わさって、この王の美しさが構成されているのだと少年は思っていた。
だが、今の王は違う。眼帯に隠れていない普通の目でもありありと判るほどに、王の全身が炎の輝きを放っている。初めてそれを見たときほどではないが、それに通ずるほどの鮮やかさで、躍動する光が王の全身を覆っている。
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