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炎に焦がれる4
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「何故、など。私に訊かれても困るな。ただ、私は私がこの力を使えることを知っている。それだけだ」
王の髪が熱気に煽られて揺れる。少年の目には、その度に彼の髪の色が揺らいでいるのが判った。
「ふ、ふざけるな! ふざけるなふざけるなふざけるな!!」
絶叫したデイガーが、地面にいくつもの巨大な魔導陣を展開させる。そして、怪しい光を放つそれらから、次々と魔物が溢れ出してきた。
まるで、金の国で遭遇したあの事件の再現のようだ。あのときと違うのは、陣のサイズとそこから出て来る魔物の大きさだろうか。
魔導陣の中心に生じた空間の歪みから現れたのは、先程ようやく一頭倒した一つ目の巨人に並ぶ大きさの魔物たちだった。一つ目の巨人と同じ種族だろうものから、四つ脚の獣のような見た目のものまで様々であったが、この世界には存在しない生き物であることと、正気を失っている点は共通しているようだ。
魔物の周囲に使役主らしき魔導師が存在せず、ぎらついた目で少年たちを睨んで来るということは、やはり彼らも使役主を殺されて怒りの矛先を失ってしまったのだろう。
「……愚かな。一体このために、どれだけの民を犠牲にした」
低く唸るような声が、王の唇から漏れた。誰に聞かせるつもりでもなかったのだろうその呟きに、少年は思わず王の顔を見上げた。普段と比べ、そこまで変化が見られない表情は、しかしどこか静かな怒りに満ちているように見える。
王には感情らしい感情がないと聞いているが、少年には何故だが、今の王が見せたこの表情が作り物だとは思えなかった。尤も、それが個としてのものなのか責務としてのものなのかまでは、判断できなかったが。
見る見るうちに二人を包囲するように立ちはだかった魔物の群れに、少年が王の袖口を握る。そんな彼に視線を落とした王は、数度瞬きをしたあと、嬉しそうに微笑んだ。
「大丈夫だ、キョウヤ。私がいる」
そう言って少年の頭を撫でた王の手を、トカゲがぺちりと叩く。そして、ふんすと胸を張るようにして見上げてきたトカゲに、王が笑って見せた。
「ああ、無論、お前のことも頼りにしているとも。……だが、そのままでは心許ないな」
そう言った王が、トカゲに手を翳す。
「分けてやろう。溜まった鬱憤を晴らすのに使うと良い」
少年には王がトカゲに何を分け与えたのか判らなかったが、トカゲがきらきらと目を輝かせて王の掌にすり寄ったので、トカゲにとってとても良いものだったのだろうことは推測できた。
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