アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
エピローቖ₩⸿⸎ⶼᚙ 9
-
「あの、あのね……、…………僕、」
判ったのだと。気づいたのだと。知っているのだと。
なけなしの勇気が、ようやく辿り着いたその想いの背を押してくれる。
「僕、貴方のことが――」
「はぁ~い! 絶妙なタイミングでお待ちかねのウロくんだよ~~!」
突然、声が割り込んできた。
余りにも突然のことに、その場にいた誰もが、黄の王ですら、声の主の存在を認知するまでに僅かな時間を要した。
――ただ一人、赤の王を除いて。
初めの一音の時点で、赤の王は僅かな遅れもなく声を認識し、五感を最大に発揮してその存在を捉えていた。それと同時に、彼の長髪が頭の上まで余すところなく鮮やかに光る紅蓮に染まり、金の瞳が燐光を放つ。
これは危険だ。これは私の命を脅かす。何を置いてでも対処しなければ。
本能が抗えぬ圧を以て告げてくる。故に彼は、それに従う以外の選択肢を持たなかった。
乱入者の声が全てを言い終える前に、彼は我を忘れ、ただ本能のままに全身から灼熱の炎を噴き上げようとした。だが――、
ずぶりと何かが肉に埋まるような音がして、今にも弾けそうだった炎が掻き消えた。
僅かに息を詰めた赤の王が、息が触れそうな距離に仮面の人物がいるのを認める。仮面を映す金の瞳が二度の瞬きで隠されたあと、何かを確かめるようにそろりと下ヘと動いた。
己の左胸。ちょうど心の臓がある位置から、腕が生えている。違う、生えているのではない。深く穿たれているのだ。仮面の人物の細くしなやかな右腕に。
「こんなところで目覚められても困るんだよねぇ。黄色の国を丸ごと焦土にするつもり?」
耳の端で誰かの引き攣った悲鳴が聞こえたような気がしたが、ロステアールにはそれが誰のものなのかを認識することができない。ただ、仮面の声だけが彼の脳に張り付くようにこだまする。
「君は本当に、度し難いほどに醜悪な生き物だなぁ。これほどまでに全てが自己の中だけで完結している生き物なんて、僕は未だかつて出逢ったことがないよ!」
肉に埋められた手が、どくんどくんと激しく鼓動するロステアールの心臓を握った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
195 / 197