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エピローቖ₩⸿⸎ⶼᚙ 11
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そう言って楽しそうに笑ったウロは、顔面を蒼白にしてへたりこんでいる少年の腕を引っ掴んだ。それをなんとか阻止しようと、黄の王が雷魔法を叩き込んだが、やはり指先一つで弾かれてしまう。事態の急変を察知して駆けつけた王獣リァンの攻撃も、ウロには全く届かなかった。
「なんだか賑やかになってきたし、ぼちぼち帰ろうかな」
僕うるさいのは好きじゃないんだよ、とのんびり言ったウロが、指先をついっと上に上げた。すると、彼の足元の地面がどろりと溶けたように波打ち、何色ともつかない不透明な膜が、ウロと少年を纏めて包むようにぐわりと持ち上がった。
「それじゃ、まったねー!」
ウロがひらひらと手を振ったのを最後に、二人を囲む膜が急速に上昇し、その姿を覆い隠していく。完全に覆われる直前、震えながらも動いた少年の唇が小さく何かを発し、その手が倒れる王へと伸ばされたが、膜はそれをも呑み込んでしまった。
二人をすっぽりと包んだ膜は、次の瞬間、突然支えをなくしたかのように液体状に崩壊して地面に落ちた。そしてすっかりと膜の消えたそこには、ウロの姿も少年の姿もない。
その光景を見た黄の王は、ぎりりと歯噛みしてウロが立っていた地面を睨んだ。
エインストラだろう少年は連れて行かれ、ウロの発言から察するに天秤の状況も芳しくはない。何よりも、実際に相対したウロという生き物は、想定していた以上に危険な存在だった。
あれを前に動ける人間はきっといない。黄の王は王という生き物であったからこそ、欠片ほどの気力を総動員して攻撃に出ることができただけだ。それこそ、王の本能のなせる業だったと言って良い。人の本能の方が勝っていたならば、あそこでクラリオは指先ひとつ動かせていなかった。
あれは、こちらの希望を余すところなく奪い去っていく、深淵のような何かだ。
初めてと称して良いだろうウロの直接的な介入の末に残ったのは、果てのない絶望と、意識の戻らない赤の王だけであった。
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