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長考
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えっち、秘密、職を失う
俺の脳内で検索するも絞りきれない
あれか?あれなのか?いや、こっち??
全俺がパニック
もういっそ逃げ出したい
けどそんなこと出来ない
どうもやつは俺の秘密を画像で握っているらしい
バレた時用に思いついた言い訳はどれも無理がある
もう黙って従うしかないじゃないか
のろのろと仕事を片付ける
「目代先生」
「ぇ、あ!はい!!」
「あ、びっくりさせてごめんなさいね
もう日も傾いてきているし今日はもう帰ったら?
部活のない先生方はもうとっくに帰ってるよ」
「っ、」
その言葉で一気に青ざめた
今は夏で、日が長いのにもう薄暗い
行きたくないがためにこんな時間まで気が付かないなんて
それに窓の外をよく見て気がついたが雨が降っていた
俺を強請っているとはいえ待っているのは生徒なんだ
もう帰っているかもしれない
いやこの雨ならむしろ帰っていてくれ
「あら、顔色が悪いね
やっぱりもう帰った方が良さそう
雨も止む気配ないし」
「そ、そそうですね!失礼します!!」
「はは、元気なのかそうじゃないのか分からないね」
「ではお疲れ様です
お先失礼します」
「気をつけてー」
ポツンとひとりぼっちで待っている坂口の姿を思い浮かべては罪悪感に駆られる
「…遅かったね先生」
「坂口…」
「来てくれないかと思った」
子猫のような瞳が俺を見つめている
ふわふわの髪の毛も雨のせいで頬にピッタリと張り付いていた
少し俯いた坂口の整った顔を伝って雨水が滴っている
「悪かった…
すっかり遅くなってしまって」
「…1人で待つのは寂しいよ」
伸びた前髪の隙間から見える顔は年相応に幼い
「すまない
…びしょびしょだな
後ろにタオルがあったはずだからとりあえず車に乗ってくれ」
「……ん」
寂しそうな、悲しそうな顔
こんな顔をさせてるんじゃ教師失格だな
俺は自分のことしか考えてなかった
それなのにこいつは長い時間ひとりで待っていたんだな
「タオルだ
とりあえずで申し訳ないけど家に着いたらすぐ風呂ためる」
フラフラと坂口が助手席に乗り込んだのを確認してロックをかける
体が冷えないように暖房をつけてタオルを渡してやる
「そういえば彼女とかいないの」
「…彼女、な
居ないよ」
俺はいつも同じ理由で振られる
所謂性の不一致
別に特殊な性癖とかはないと思ってるけど
「ふぅん
ならいいか
そういえばこのまま座っちゃったけど助手席びしょびしょになっちゃいますね
ごめんなさい」
「迎えに来るのが遅れた俺のせいだよ
坂口は気にするな」
「……ふむ」
「ん?」
「家って近いの?」
タオルでわしわしと髪をふいた後は小さく纏まって目を閉じている
「近いよ」
「じゃあ時間ギリギリでも間に合いそう」
「俺は朝早いんだよ
お前と一緒にするな」
「年寄りみたい」
「失礼な」
こいつが軽口を叩くなんて知らなかった
自分から喋ったりしないし
表情も変わらないから何考えてるのか分からない
それなのに今日だけで新しい坂口の表情を見つけた
「俺、嬉しいよ」
「ん?」
「来てくれて」
「…ん」
嬉しいという言葉に罪悪感がじわりと滲んだ
「一人の時間ってさ
寂しいけど、その分一人じゃなくなった時は倍嬉しいんだ」
「…そうか」
「だから俺、学校好きだよ
人が沢山いるし、何人かはいつも俺に話しかけてくれるし
あと先生もいるしね」
「俺はついでか」
はは、と苦笑いして助手席を盗み見る
坂口はなんとも言えない顔をしていて
俺はそれ以上は何も言えなかった
学校が楽しいのは
家で一人だから
そう聞こえなくもない
ふと思った
バイトは一人の時間を減らすためにしているのだろうか
いや、こんなこと考えるのはやめよう
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