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おとまり
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暖かい食事は久しぶりだ
人が作ったものはもっと久しぶりだ
いつも適当なものを適当に食べて済ませていた
俺は冷や飯も嫌いじゃないから買ったものをわざわざ温めたりもしない
自炊なんて考えもしなかった
一人暮らししてもそれは変わらないだろう
「……」
この教師だってそういう奴だと勝手に思っていた
「?どうした、口に合わないか?」
「美味しいですよ
少なくとも俺が今まで食べたパスタの中では1位ですから」
「調子のいいやつだな」
「…」
本当なんだよ
「で、そろそろ本題を…って」
「…おかわり」
「はぁ、男子高生はこれだから…」
やれやれと大袈裟に首を振る
「…お店のやつみたい」
「そう言われると悪い気はしないんだよなぁ」
ほら、と渡される皿を受け取って食べる
やっぱり美味い
いや、一人暮らしの男にしては美味すぎるんじゃ無いか?
「うま」
まぁ、どうでもいいか
「はは、仕方ないな
気が済むまで食えよ」
久しぶりの食事かの如く食べ続ける俺を面白そうにじっと見ている
「見ないでください」
「もぐもぐしながら喋るな」
「あい」
「本当によく食うなぁ
見てるだけで胃がもたれそうだ」
「失礼な
俺は普段少食ですよ」
すっかり食べ終わって漸く食べすぎたことに気づく
子供みたいにがっついちゃったな
「はいはい
じゃあテレビでも見てな」
食べ終わった皿の代わりにリモコンが置かれる
「俺、洗う」
「いいよ
どういう理由であれお前はお客さんなんだから」
「……ねぇ、俺ここに住みたい」
「!?」
「だめ?」
「ダメに決まってるだろ……?
急に怖いこと言うのやめろよ
心臓口から落とすとこだっただろ
今どき男子生徒相手でも淫行教師とか言われるんだよ」
「家事やるから」
「こんな狭い部屋の家事なんざたかが知れてるんだよ
俺一人で十分だ」
「家賃払う」
「安月給に激務とはいえ収入に不満はないから必要ない」
「……じゃあ誰にも秘密にするから。」
「…何を?」
「あれ」
「あれ…??」
「大変なやつ」
「どれ……????」
「うん」
「……お前、俺を強請ってどうしたいんだよ」
「……」
「まさかここに住みたいとかそういうことじゃないんだろ?」
「…1人で、居たくないんだ」
「…」
「1人だとご飯はスーパーのパン1つで終わらせちゃうし、映画見ても誰にも感想言えないし、あと、ひとりぼっちで寝ると…嫌な夢を見るから
だから…俺、高校生だし誰かと同居とか、出来ないし、それで…」
「夜、寝れてないのか?」
「何度も同じ夢の同じところで目が覚めて、寝ようとしても
明るくなるまで、兄さんがずっと居るから」
「…」
「きっと幻覚
兄さんがそんな事する訳ない
だけど眠れない寝ても寝ても目が覚めたら目が合うんだ
1人で居るとずっとずっとすぐそばに居る」
「お兄さん、か」
「ねぇ、人がいるところなら兄さんは現れない
1人になりたくない
俺をここに置いて
何でもする
秘密も誰にも言わない
他にお願い事はしないから」
「…今日は泊まってもいい
だけど、もう少し考えさせてくれ
明日の帰りまでにちゃんと考えるから」
「……わかった」
「ほら、皿洗ってくるからなんか見て待ってろ」
くしゃくしゃと頭を撫でてキッチンに消えていく後ろ姿をぼーっと見送った
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