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その日は酷い雨だった。
短大卒後、苦労して入った企業の売上は右肩下がり。
流行病のせいだと理由をつければそれなりに納得も行くが、お偉いさんにとってはそんな理由では受け入れられないだろう。
「ごめんね、君は悪くないんだけどさ。」
珍しく打ち合わせかもしれない。
そんな気持ちで向かった会議室で現実を突きつけられた。
"事実上解雇"
日本人のうち、今日何人がこんな経験をしただろうか。
出来れば俺だけであって欲しい。
「……俺、だけですか。」
最初に出たのはその言葉だった。
握りしめたスケジュール帳兼手帳にはほとんど予定なんて書いていなくて、確かに働きは悪かったかもしれない。
それでも俺なりに頑張ってきたはずだった。
不運 それだけでは受け入れられない程。
「いやぁ……君だけじゃないけど、ごめんね。ほんと。また詳細は追って連絡するから。」
「……そう…ですか。」
「ま、まだ確定では…ないしね。」
その人ははぐらかすように言うと、そそくさと会議室を出ていく。
手から力が抜けスケジュール帳が落ちる。
挟んでいたボールペンが転がり隣の椅子の隙間に入り込んだ。
ついてない。
これだけ人がいる中でどうして選ばれてしまったんだろう。
「まぁ……理由はあるんだろうな。」
ぐらりと揺れる背もたれに体重をかける。
遅かれ早かれこうなってはいたんだろう。
不況に揉まれ…と、言い訳を出来るだけましかもしれない。
「すみません、まだ使いますかー?」
女子社員の声に顔を上げる。
ひょっこりと顔を出した女はきっと「会議室を使いたいから出ていけ」と言いたいんだろう。
自暴自棄になりました。
なんて理由でこの女を暴力的に抱く勇気が出れば解雇にはならなかったのかもしれない。
俺にはそんなに勇気も、力もない。
「いえ。出ます。」
「ありがとうございまーす。」
こんな敬語も良く使えない女よりも、俺の方が選ばれてしまった。
それも答えだろう。
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