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あの日、俺は初めて音楽の渦に巻き込まれた。
そこの支配人の彼女の後輩だとかでチケットを譲られた姉につれられた隣町のライブハウス。
決して大きい会場ではなかったし、別に人気のバンドだったわけでもない。
でも、そこには確かに、俺を夢中にさせるなにかがあった。
俺はその日のトリをかざった『マシュマロモンスター』という四人組のバンドに特に魅せられた。
ライブハウスを巡り、CDを何枚も買い、メンバーに顔を覚えてもらうまでになった。「また来てくれたんですね」と嬉しそうに言ってくれたことを今でも覚えている。俺も嬉しかった。
高校生になって、俺は貯めたお年玉でギターを買った。
リサイクルショップの端で色褪せていたギター。前の持ち主は夢に挫折したのだろうか。もっといいギターに買い換えたのだろうか。
そんなことも、ギターの型番も、コードすらも知らなかったし、コード以外は今でも知らない。
俺に才能がないなんてことは、2ヶ月もすればわかった。弾けるようになったんだとは思う。でもそこに、あのバンドみたいな、人の心をつかむなにかはなかった。
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