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01 出会い
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綺麗な男だった。
色が白く細身で身長は然程高くなく少年かと思った。
野暮ったい燻んだ若草色のジャケットを脇に抱え、ショルダータイプのビジネスバッグを肩に掛けている。
スーツのスラックスはやや大きめなのか少しダボ付いて見える。
大きいのはスラックスだけではない様でボタンを留めていないのか、重そうなビジネスバッグに引っ張られ後ろ下がりに拡がった衿元から細い頸が露わになっている。
彼だけ、世界と境界線が引かれピントが合った様に私の眼の中に飛び込んできた。
顔はまだ見えない。
しかし見えずとも透き通る様な肌と黒い髪がその男の美しさを物語っていた。
足早に流れていく人混みに紛れて彼の後を追うことを決めた。
見た目通り細身の彼は軽かった。人気のない公園を通り、単身者用の古びたアパートの玄関で監視カメラが無いことを確認すると、背後から近づき睡眠薬を染み込ませたタオルハンカチで顔を押さえ付ける。
後ろへ反らせるように力を入れると鞄の重みも加わったのか、バランスを崩して倒れ込んできた時には既に意識を手放したようだった。
彼を繁華街沿いの道まで肩を組んで引き摺るようにして出るとタクシーを拾い、酔い潰れた同僚を介護している体でタクシーへ乗り込んだ。
そうして遊び場のひとつ、廃業した小さな診療所を買い取り遊べるように改築し整えた地下の部屋へ彼を運び込む。
眠ったままの彼を床へ転がし、部屋の明かりを付けて初めてハッキリと顔を確認する。
想像していたよりも男らしい。
年は20代半ばごろか。
色は白いが程良く太い顎、目は切れ長で涼やかだ。
眉毛は整え過ぎて薄いが形は良い。鼻と頬に散らばるそばかすが少し幼い印象をもたせているのだろう。
長い睫毛の下の眼を早く見てみたい。
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