アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
遭遇
-
寝て起きて歩いてまた少し寝て歩く
救助が来るまで生き延びるなんて無茶だ
恵くんごめん
俺が言うこと聞いてたら…
歩く
歩く
歩く
木と草と石と土
どこまでもどこまでもおなじ
口の中に血の味が広がる
上手くいかない時に下を噛むのは俺の悪い癖だ
どうしよう
思考がままならない
腹が減った喉が渇いた
もうずっと歩いた
疲れた
なにか、くぐもった声のようなものが聞こえる
逃げ延びた仲間だろうか
いや、声?
近づいてくる音に耳を澄ませても言葉は判別できない
「っ、」
突然俺が背を向けている木の枝がバキバキと折れた
なるほど、人ではなかったらしい
そこに居たのはこちらを見つめて唸り声を上げている熊だ
どうしようどうしよう
こういう時はどうするんだっけ
ダメだ分からない頭が働かない誰か助けて
気づけば俺は走っていた
なるべく細い道をかき分けながら
俺みたいなのが走っても逃げ切れるわけが無い
あぁでもここで止まったらきっとすぐに死ぬ
もう少し、恵くんになにか残せるくらいの時間があればいいのに
無我夢中で走っていると目の前に小屋が見えた
あそこまで行けば助かるだろうか
痛いのは怖い
扉を開けて中に飛び込んだら直ぐに扉をしめるんだ
それが出来れば助かる
大丈夫、こんなところで死んだりするわけが無いだろ
怖い怖い怖い
声が聞こえる
怖い声が聞こえる
熊の唸り声がすぐ後ろで
扉まであと1m
届いてくれ頼むから
ここで助かればもうわがままなんて言わないから
大きな破裂音の後に耳を何かが掠った
俺は尻もちを着いてしまって
覚悟を決めて目を瞑った
だけど熊の唸り声も、地面を鳴らす足音も
もう聞こえなかった
「ぇ…」
ぐったりと倒れ込む熊
血を流しているらしかった
すっかり腰が抜けて立てない
ふと耳が熱いことに気がついた
触れるとぬるりと何かが垂れた
ちぎれてる?
意味がわからない
何故?
痛い、痛くなってきた
「あぁ?人ぉ?
まだ居たんだぁ」
いつの間にか開いた扉から人が顔をのぞかせていた
「ぅ、あ…くま、が……みみ…ぅ」
「うんうん熊に追いかけられちゃったぁ?」
「そ、そう…です」
子供にするように優しく話しかけられて、ほんの少しだが落ち着くことが出来た
「名前はぁ?」
「れ、い…黎です……」
「レイくんかぁ
もしかして今腰抜かしてんのぉ?」
「…はい」
「あは何それまじウケる
とりあえず入んなよぉ
お腹すいてんでしょ?」
「ああぁありがとうございます…」
助かったんだ俺
肩を借りて扉をくぐった
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
2 / 2